■ 2004.10月読書記録

 10/1 『スカーレット・クロス 隠されし月の誓約』[瑞山いつき/角川ビーンズ文庫] →【bk1

 不良神父とその『聖なる下僕』となった吸血鬼の少女の物語、スカーレット・クロス4巻目。

 感想。最終的な展開は、大きく予想を裏切らず。せいぜい、あの人があそこまであっさり殺されるとは思ってなかったぐらいか。ツキシロもかなり健闘してて前巻に引き続き好印象だったし、ギブとその周囲の人々は――まぁ、現段階ではあんなものかなぁ、という感じ。ツキシロとギブの距離は個人的になかなか美味しゅうございました。ただ、好みを言えばもっとこう(以下問題発言につき検閲削除)
 ギブと敵対してきたヨセフ神父と彼の『聖なる下僕』エヴァ。「やっぱりこういう主従はこういう最期がお約束だよな」と思いつつ、ちょっと涙ぐんでしまった……。

 これで完結と言われても問題がなさそうですが、どうも続編発売の可能性が結構高そうな感じ。……この先どんな展開にするのか多少の興味はありますが、はてさて。

 10/3 『これがマのつく第一歩!』[喬林知/角川ビーンズ文庫] →【bk1

 小市民的正義感の持ち主にしてへなちょこ魔王ユーリが頑張る「まるマ」シリーズ12冊目(本編10冊目) 前回から引き続いて(まだ到着してないけど)聖砂国編プラス雑誌掲載の短編が収録。

 本編のほうは、あんまり話が進んでません。激鬱なところで話を区切るよりは、ということでちょっと短くして今回のところで区切りになったそうですが……。別に鬱でもいいからもう少し話進めてほしかったなぁ、と思ったり思わなかったり。それにしても、鬱って……多分あの人関連だと思うけど、どんな展開が用意されてるんだろう。何せ彼、当初は(検閲削除)はずだったそうだから、どんな目に合わされてもおかしくないし。
 登場人物の話。ねじれまくってる次男とユーリの関係にやきもきしたり(読者には次男の思惑が透けて見えてるんだけど、ユーリは知る由もない話だから、仕方がないといえば仕方がないんですが)、大真面目なのに相変わらずな眞魔国の面々にちょっと笑わされたりとか。サラは天然で黒いというより、基本思考が完璧王様なんだという認識で落ち着きました。あと個人的には意外なことに、勝利兄が本編にも登場。ムラケンやらボブは無理だと言ってますが、個人的にはなんとかして向こうに渡ってほしいです。いろいろ面白そうだから(理由はそれだけか) 短編は雑誌掲載時に読了済みなので特に感想書きませんが、現在の本編と比べたらごく普通のほのぼのしたお話(え?)になってます。……ちょーっとばかり、想像力を停止させるヤな物体がありましたがね。ふふふふふ……。

 まぁとにもかくにも、次巻以降の展開に期待というところです。

 10/10 『キノの旅VIII -the Beautiful World-』[時雨沢恵一/電撃文庫] →【bk1

 キノとエルメス、一人と一台のあてのない旅を綴った、寓話調の連作短編集第8巻。1年近くも新刊出てませんでしたか……。

 今回は、キノ主体の話はやや少な目かも。で、内容的にはまぁ、毎度のとおりでした。恒例になった若かりし頃の師匠の話「歴史のある国」もある意味いつもどおり。やっぱり師匠は鬼だ。何気に弟子も鬼だし……。あとは、シズがメインになってるエピローグ。今回収録されてる話ではこれが最長。全体のページ数の半分近くを占めています……なんかもう、どこがエピローグだよって感じですね(苦笑) そんな長さなものだから、内容も普通に中編。とりあえず、シズとキノはどこかですれ違うことはあっても再会することはないだろうと思ってたので、ちょっと驚きました。それ以外は……プロローグ(実質的にはこっちがエピローグなワケだけど)最後でのキノとエルメスの会話はどういう意味なのかとちょっと首をひねったり。

 で、毎度おなじみのネタあとがき。今回もまた凝ってました。むしろ凝りすぎだと思う(笑)

 10/11 『Hyper hybrid organization 00-02 襲撃者』[高畑京一郎/電撃文庫] →【bk1

 特撮ヒーローモノをベースに展開しているH2Oシリーズの外伝2巻目。「あれ、まだ前の巻が発売されてから4ヶ月しか経ってないよ?」と思ったのは、私だけではないはず。

 悪の組織「ユニコーン」結成秘話であるこの外伝ですが、1巻に引き続き今回も内容は普通に任侠モノ。ただ、辰巳組の病院襲撃付近から本編につながる部分――ハイブリッド技術の存在に速水たちも深く関わっていくことに。この技術を自分の支配下において力を蓄えようとする速水たちですが、肝心の技術を持っている3人の科学者のうち佐々木はある思惑を秘めていて、速水たちも予期せぬ動きをみせ……という展開。佐々木が予想以上の策士で、終盤の駆け引きが読んでて楽しかったです。それにしても、成程。こういう経緯でユニコーンが創設されたわけかと納得しました。道理で、本編でも内部での冷戦が激しそうなわけだわ……。

 とりあえず新組織は佐々木の思惑通りの形で結成されましたが、主導権を握ろうとする速水たちの出方や藤岡の決断、その他の人々の去就などいろいろと気になりますので、できるだけ早く続刊が読めることを祈ってます。ついでに本編のほうもそろそろ発売されることをこっそり祈っておきます。

 10/12 『GOSICK III -ゴシック・青い薔薇の下で-』[桜庭一樹/富士見ミステリー文庫] →【bk1

 西欧の小国に留学した少年と留学先の学園に住む奇妙な少女の交流と、彼らの遭遇する事件を描いたシリーズ第3巻。

 今回の話では、完全に一弥とヴィクトリカが別行動してます。とはいっても、別に深刻な喧嘩をしたわけではなく(毎度のように、子犬のじゃれあいみたいな軽い喧嘩はしてますが) 一弥は、姉に手紙で頼まれた品を買いに少し離れた街に出掛け、ヴィクトリカは風邪で寝込んでしまってる、という状況。そして、一弥が出掛けた先でちょっとした事件に巻き込まれて――という展開。ミステリとしては、富士ミスにしては健闘してると思いますが、やはり軽めかと。まぁ、富士ミスは「LOVE」が売りらしいからこの点は特に問題ないでしょう。多分。ミステリとしてもつまらないわけではなく、ネタがある意味手堅いから普通には楽しめますし。

 で、「LOVE」方面に関しては……ヴィクトリカと一弥がなんとも微笑ましくてねぇ。読んでて、つい顔がほころんでしまってましたよ。うーん、若いっていいなぁ(意味不明) それに加えて、ヴィクトリカが単体でもかわいい場面が多くて、なんとも微笑ましい気分になってました。一弥の姉が送ってきた着物を貰って密かに大喜びしてる場面は、個人的にツボ。つーか、とにかくヴィクトリカと一弥、二人のやり取りやら行動がかわいいから、多少強引な展開でもつい大目に見てしまってる感があり。「LOVE」の威力、侮りがたし。
 あとついでに、ドリル頭な警部の株が少し上昇。変な頭っていう自覚はあったんですね……。

 次巻ではヴィクトリカとアブリル(一弥に気があるようすの同級生)の初対面がある模様。鈍感な一弥を挟んで、二人の少女がどんな状況で顔を合わせるのかちょっと楽しみです。

 10/14 『平井骸惚此中ニ有リ 其参』[田代裕彦/富士見ミステリー文庫] →【bk1

 大正浪漫な正統派探偵小説第3巻。

 さて今回は、平井家に居候中の河上君のもとに幼馴染の翠子という女性が訊ねてくる事から始まります。「昔の約束で、お嫁さんにしてもらいに来ましたー(要約)」という彼女の登場に、河上君を憎からず思っている涼嬢は気が気でない、というラブコメの王道のような展開。加えて、發子ちゃんもかわいらしかったです。今までもかわいいと思ってたけど、今回は河上君がらみで特にかわいく個人的にポイント上昇。正ヒロインは勿論涼嬢でしょうが、發子ちゃんがもうちょっと成長したら姉妹でのに河上君争奪戦が勃発したりするんでしょうか。楽しみですねぇ(笑) ……それにしても、こういう話のお約束とはいえ河上君は鈍感やね……。あと、骸惚先生と澄夫人も相変わらず素敵なご夫婦でした。そんなこんなで、らぶらぶに関してはニマニマしながら楽しんでました。

 ついでに、富士ミスにしてはまっとうにミステリしている部類なこの作品(…ついでなのか…?) こっちのほうは、翠子が誘拐事件の容疑者にされてしまい、また翠子自身もなにやら隠している様子で……という感じで話が進んでいきます。「LOVE」の充実ぶりと比べると、やはりこちらはやや弱いかと思いますが、まぁ、富士ミスだし(←その一言で片付けるなよ)

 とにもかくにも、次巻はどんな話になるのか楽しみです。そしてやっぱり、現代(平成)組は大正組とどういう関係なのかが気になる……。

 10/19 『エンジェル・ハウリング10 愛の言葉――from the aspect of FURIU』[秋田禎信/富士見ファンタジア文庫] →【bk1

 二人のヒロインそれぞれの視線で描かれた「エンジェル・ハウリング」シリーズ、このフリウ編最終巻をもって完結です。
 これまで散々よく分からないと叫んできておいてなんですが。最終巻で、なんかいろんなことが一気に腑に落ちたような気がします。あくまで気がするだけなので、説明しろとか言われたらかなり困るし、実際のところどこまで理解してるかは謎ですが。

 さて感想。前巻でのミズーに引き続き、この巻ではフリウの精神的な変化が目を引きました。アマワに対する言葉といいエピローグでの姿といい、彼女もなかなか良い感じに成長したなぁ、と思います。
 で、アマワ関係の話は結局分かったような分からないような微妙なところなのが我ながら情けないです(凹) とか言いつつ、フリウとアマワのやり取りなどはすんなり理解できたというか分かった気になっていたりして。おそらくは、このあたりの場面を「大審問官」(注意:『真・運命のタロット9 《世界》。』の章名の一つ)に近い空気だと認識したためだと思います。……いや、作品の設定やらテーマやらは随分違うんですけどね。でも、この一連の場面だけは共通するものがあるような気がするのです。あくまで私は、ですが。

 ともあれこれで完結。やや抽象的に過ぎる問答やらが多くて理解しづらい面もありましたが、終わってみればミズー編フリウ編ともに爽やかで後味も悪くない綺麗な幕引きだったし、なかなか面白い作品だったように思えるのが不思議。つーか、シリーズ全巻一気読みしたら1巻ずつ時間を置いて読み進めていたときとはまた違った感想を持ちそうな、そんなシリーズですねこれは。

 10/21 『眠り姫』[貴子潤一郎/富士見ファンタジア文庫] →【bk1

 第14回富士見ファンタジア大賞にて、同賞史上3人目となる大賞を受賞された作者氏の新作。ドラゴンマガジンなどに掲載されていた短編4本と未発表作&書き下ろし3本で構成された短編集です。

 どの作品も普通に楽しめました。同時にどの作品も、色んな意味で「富士見ファンタジア」っぽくないなぁ、と思いました。
 雑誌掲載分の短編は、なんというか、単純に面白さの方向性がレーベルのそれと違う、という印象。もう少し内容を掘り下げてもう少し書き込んだら、一般向けレーベルで出版されてもおかしくなさそうな、そんな感じ。この4本の中では、「さよなら、アーカイブ」が一番好みだったかな。
 未発表作&書下ろしの3本は「探偵真木」という副題のついた、探偵とヤクザの腐れ縁を中心にした作品。こちらは、ちょっとヘタレたハードボイルドという印象。微妙に笑いを誘う部分もあったりと、まぁ普通に面白かったです。つーか一応探偵が主役なんだから、富士ミスで出したらいいのに……と思ったのは秘密です(←ここで書いたら意味がありません)

 次回作は長編になるのか、今回のように短編集になるのか。どうなるにしろ、気長に楽しみに待つことにします。

 10/22 『ザ・サードVII 死すべき神々の荒野(ゲヘナ) (上)』[星野亮/富士見ファンタジア文庫] →【bk1

 文明崩壊後の惑星を舞台に、何でも屋の少女・火乃香と彼女を取り巻く人々が織り成す物語「ザ・サード」、長編第7幕は6幕に引き続き上下巻構成。

 ……題名的にも展開的にもそろそろ最終エピソードに入るのかなーと思ってたら、予想を裏切ってパイフウの過去が関わった外伝的なお話でやや拍子抜け。別にそれが悪いとは言わないけれど先に本筋を完結させて欲しいよなぁ、と思ったり思わなかったり。
 で、内容としては砂漠行ありの戦闘ありで、まぁある意味いつもどおり。パイフウのみならず火乃香にまで注目している「ハデスの四神」の目的などの謎は当たり前ですが完結編に持ち越しになってますので、今のところは良くも悪くもいつもの「ザ・サード」だなぁ、というぐらいしか感想は持てず。とにかく下巻待ちですねー。
 ……それにしても。なんとなく、緊張感が欠けるんですよね。おそらく原因は、強さのインフレの進みすぎでしょうけれど。作中で登場人物たちが凄い凄いと言われたり、あまつさえ火乃香を上回るような技量の人(?)が登場したりしても、どこか醒めた目で見てしまうというか。そんな微妙な心境。話そのものがつまらないわけじゃない、と思うんですが……段々、好みからずれてきてるのかなぁ。

 なにはともあれ、下巻は12月に発売される予定らしいので、あまり待たされずにすみそうです。

 10/24 『復活の地 III』[小川一水/ハヤカワ文庫JA] →【bk1

 とある惑星国家の首都を襲った大震災とそれに伴う諸々の人々の思惑を描いたSFシリーズ、最終巻。

 再び迫る大震災の悪夢。セイオやスミルは首相サイテンによって権限こそ奪われてしまったものの、被害を最小限に抑えるためそれぞれができることを実行していく……という展開。この数々の行動が、地味ながらもとにかく熱かったです。「天災とは、戦える」(p.72)というセイオの言葉が、なんとも力強く。そして、彼の言葉を裏打ちするような、官民・組織の枠を超えた被害を抑えるための無数の方策に納得したり感心したり感動したり。……現実でもこういう動きが取れればいいのでしょうけど……正確な日付がわからない以上、日頃から備えておくしかないんだろうなぁ。やっぱり。
 地震の原因はどう処理するのかな、とちょっとばかり不安に感じていたのですが。これに関してもなかなか上手い処理だったのではないかと。何よりも、デウス・エクス・マキナ的処理ではなく、作中世界の人知が及ぶ技術で解決されてるのが良し。

 登場人物は、セイオやスミルは言うに及ばず、脇役にいたるまで格好良かったです。シンルージ都令なんかは1巻の典型的官僚ぶりはどこへやらという感じだし、前巻の展開でちょっと注目してたノート大尉の行動も満足……というのとは違うな。なんというか、直前のソレンスの叫びやらあの一連の場面全部ひっくるめて、ぐっときました。あと、セイオとスミルの関係に関してはp.378-379の会話とイラストで十分満足いたしました。エピローグの一文も良かったですねー。
 一方、セイオたちと敵対する側に立ったサイテンは思っていたより呆気なかったというかボロが出すぎというか。なんか、敵役であったがためにあれこれ割を喰ってしまったようで、ちょっと気の毒な気もしなくもない……。
 惑星レンカの将来はまだどうなるか分かりませんが、良い方向に向かうことを期待したいですね。

 震災ネタという心理的にしんどい作品ではありましたが、全3巻堪能いたしました。ほとんど文句もなく、面白かったです。次回作にも期待。
 そして願わくば、この作品で描かれた規模の地震被害が、現実には起こりえませんように……。

 10/25 『吉永さん家のガーゴイル 5』[田口仙年堂/ファミ通文庫] →【bk1

 ご町内ほのぼの+微妙に錬金術(?)なコメディ第5巻。今回はご町内で勃発したお祭りバトルを中心。また、これまで登場したキャラがほぼ総出演してます。

 既刊の中では、一番1巻の雰囲気に近かったですかね。個人的には錬金術バトルよりご町内との交流話のほうが気に入っていたので、今回の展開は嬉しかったです。あえて言うなら、せっかくのお祭り話なんだからシリアス系というか感動系というかそういうノリを盛り込まず、徹頭徹尾コメディ調でまとめてくれればもっと面白く読めたと思うのですが……まぁこれは趣味の問題ですね。
 賑やかな面々の中で特にスポットが当たっていたのは、吉永さん家のパパさんとママさん。詳しくはネタバレになるから省略しますが、お似合いの良い夫婦だなぁ、と思いました。

 6巻がどんな話になるのか、また楽しみなところです。

 10/31 『流血女神伝 暗き神の鎖(後編)』[須賀しのぶ/集英社コバルト文庫] →【bk1

 架空歴史ファンタジー「流血女神伝」、ザカール編最終巻。「女神の娘」としてザカールに迎えられたカリエと、彼女を救おうとするエドたちの動き。事態の多くは予想できる範囲で推移してるにも関わらず、読み終わって思わず溜息が漏れるほど凄かったです。いろいろと。

 以下、ネタバレしないように気をつけながら徒然と感想。
 表紙イラストの、あまりにらしからぬ虚ろな瞳から嫌な予感はしてましたが、もう初っ端から「カリエが、カリエがー!」という状態。これまでどんな苦境にあっても力強く生き抜いてきた彼女が打ちのめされ、遂には人形のようになってしまった姿に思わず絶句。さらに、ラクリゼの状態にまた絶句。この2点だけで、「リウジール許すまじ!」となる私は、やはり相当心が狭いかもです。いや、彼にもちょっぴりぐらいは同情する部分も確かにあるのですが、でもそれを怒りが遥かに上回るのですよ……。
 一方、カリエ救出隊。エド、サルベーン、トルハーン、ソードさらにはイーダルまで加わったこの面々の掛け合いは、正に一服の清涼剤。笑ってる場合じゃないのに、何回吹きだしたことか。また、エドとサルベーンは「あの瞬間」の行動が、ね……見直したというか、なんというか。
 それからエティカヤ。バルアンは、私が思っていた以上にカリエを彼なりに真剣に愛していたんだなぁと。彼らしい冷徹な計算もしつつ、それでもカリエたちのために行動してくれて、本当に嬉しかったです。あと、ナイヤもカリエの真情を察してくれていてまた嬉しかったです。なのに、嗚呼……。
 で、今回ちょっとしか登場しなかったルトヴィアですが。前巻での先帝の一喝に加え、ミュカの指摘でドーンがこれまでの自分の態度を省みているのにやや安堵。これで良い方向に向かうと信じたいのですが……。

 大祭の場面は、いろいろ凄かったですね。女神の枷から逃れたカリエといい、女神の怒り(あるいは歓喜)が下った瞬間のエドとサルベーンの行動といい、暗闇の中でのカリエの思いといい、ちょっと胸が熱くなりました。それにしても、一連の場面でどうしても、時期的に現実の光景が脳裏をよぎりますね……。
 そして。最後にカリエが迫られた選択。……理性ではカリエの言葉に賛意を示しますが、私ならそれは最終的に、多分選べない。だからこそ、それを選ぶカリエは純粋に凄いと思います。しかし、これで決定的にバルアンと道を違えてしまった様子なのが切ない……というかバルアンがこの先どうなるのか……(涙)

 次は夏、最終章「ユリ・スカナ編」が始まるとのこと。これまでは話の主軸から離れていたユリ・スカナですが、今回ほんの僅か語られた話、そしてこの話が出たときのイーダルの様子からすれば事はなかなか深刻なようで。この国は勿論、ルトヴィアやエティカヤの行く末、カリエたち主要人物の運命がこの先どうなっていくのか。とにかく待ち遠しい限りです。

CopyRight©2000-2006. haduki aki. All rights reserved.