『怪奇編集部『トワイライト』2』[瀬川貴次/集英社オレンジ文庫]

大学の先輩の紹介でUMAや怪奇現象を扱う雑誌の編集部でアルバイトをすることになった大学生・駿(実家は神社で人並み以上に超常現象を呼び寄せやすい性質)が遭遇する出来事を描いた短編集、第2巻。

1巻もそうでしたが、裏の作品紹介で「まったりオカルト事件簿」と書かれてるけど、実はこれ相当怖くないだろうか……?(特に1話目)と首をひねって考えてしまう。でも、怖いはずなのにやっぱり妙にコミカルで笑えてしまうという、不思議な面白さがありました。個人的には1話目の幽霊旅館の話がオチも含めて気に入りましたが、2話目のなんと表現すればいいのかわからない混沌としたノリも楽しかったです。
キャラクター的には、駿の弟が兄のバイト先を知って現状確認兼ねて遊びにくる、というのはまだ想定内でしたが、編集部を逆恨みする自称預言者が襲撃してきたのは「そういうのもありなんだ!?」という感じでしたね。この自称預言者の薔薇王院さん、いろんな意味でインパクトの強いキャラだったけど、また絡んでくるのかな……絡んでくるんだろうなああの様子だと(笑) あと、駿以外の編集部の面々も肝が太すぎて、このひとたち実は今出てる情報以上に何かあったりするんじゃないだろうかと勘ぐってしまうレベルなんですが、果たして。

今回さらりと判明した駿の置かれた境遇もこの先関わってくるだろうし、千夏ちゃんの想いの行方も含めて楽しみなので、また1年後ぐらいに新刊が読めたら嬉しいなあと思います。

作品名 : 怪奇編集部『トワイライト』2
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著者名 : 瀬川貴次
出版社 : 集英社オレンジ文庫(集英社)
ISBN  : 978-4-08-680157-7
発行日 : 2017/11/17

『テスタメントシュピーゲル3(下)』[冲方丁/角川スニーカー文庫]

近未来の世界、テロの脅威に晒されている都市・ミリオポリスで戦う少女たちの物語「テスタメントシュピーゲル」最終幕後編。

感無量。その一言に尽きました。
上巻から続く涼月の突撃さながらの勢いで、残った伏線の回収や諸々の過去・因縁に決着がついていく様は、まさに怒涛・圧巻。
何を言っても足りない気がするのですが、とりあえず登場人物について。「何でもかんでも殴って解決する」涼月は、どんな状況でも前に進み続ける姿が最後まで最高すぎました。鳳は皇と蛍との会話と最後の駅での冬真とのやりとりがよかった。陽炎と乙は、シリーズ最初の頃は怯えるばかりだった過去にまっすぐ向きあい、そして勝ち取った結末に万感の思いがこみ上げた。夕霧は……最期に声が届いたのは、彼にとっても救いではあったのでしょう。雛は某所就職確定と思っていたので、とても嬉しい予想の裏切られ方でした。登場時は恐ろしいばかりだった特甲猟兵達は、真相がわかってなんともやりきれない気持ちに。届かなかったもの、握りつぶされた想いがなんともやりきれず……かろうじて夕霧の声が届いた白露と、ある場面で某人を殴りつけたギリアンに、多少ではありますが救われた気分でした。つーかギリアンさんは全体的にカリカリしてるのに、おもしろかわいいひとだったよね……。その他の悪党どもの末路は、これまでの溜飲が下がった気分(某団体に関してはいろいろと複雑な思いもなくはない) しかし、「偉大なる龍王」「ムニン」「サイクロプス」と、ここまで引っ張ったローデシア幹部連中が意外と小者だったのは、ある意味リアルな感じでしたね……。あ、上巻の時点で予想してた彼らの正体、サイクロプス以外は当たってました。

報いられざること一つとしてなからん。事前に予想していた以上の大団円は、ここまで戦い続けてきた少女たちの「卒業」に相応しい、未来に向かって踏み出した彼女たちの姿に希望を感じる、とても素晴らしいものでした。この物語が読めて、良かったです。

作品名 : テスタメントシュピーゲル3(下)
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著者名 : 冲方丁
出版社 : 角川スニーカー文庫(KADOKAWA)
ISBN  : 978-4-04-105181-8
発行日 : 2016/7/1

「好きなライトノベルを投票しよう!! 2017年上半期」に投票してみる。

いちせさん主宰の「好きなライトノベルを投票しよう!! 2017年上半期」、今回もさほど読んでませんが、賑やかしで参加です。

『テスタメントシュピーゲル3(上)』(冲方丁/角川スニーカー文庫)【17上期ラノベ投票/9784044729127】 → 感想:2017.01.17
『腐男子先生!!!!!』(瀧ことは/ビーズログ文庫アリス)【17上期ラノベ投票/9784047347106】 → 感想:2017.06.26
『カロリーは引いてください!~学食ガールと満腹男子~』(日向夏/富士見L文庫)【17上期ラノベ投票/9784040722863】 → 感想:2017.05.16
『先生とわたしのお弁当 二人の秘密と放課後レシピ』(田代裕彦/富士見L文庫)【17上期ラノベ投票/9784040722160】 → 感想:2017.03.22
『Fate/strange Fake(4)』(成田良悟/電撃文庫)【17上期ラノベ投票/9784048927567】 → 感想:2017.04.18

個人的な順位としてはテスタメントシュピーゲルが頭一つ以上抜けてて、あとは横並びかなー。Fakeは次巻が初っ端から戦闘になりそうで楽しみ。他の3作は続編待ってます。
あと、もしもライトノベルに近い一般文芸枠として投票するなら、『有頂天家族2 二代目の帰朝』(森見登美彦/幻冬舎文庫)と『ゲームセットにはまだ早い』(須賀しのぶ/幻冬舎文庫)かな。とても好き。

『腐男子先生!!!!!』[瀧ことは/ビーズログ文庫アリス]

発売以降、あちこちで面白かったという感想を見かけて気になったので購入してみました。「小説家になろう」でWEB連載されている作品の書籍化です。

あらすじは、同人活動をしている女子高生・早乙女朱葉のサークルスペースにあるときやってきた男性客が、なんと通っている高校のイケメン生物教師・桐生だった!という残念というか恐ろしいというかな出会いから始まるお話。連作形式かつ1話1話はショートショートぐらいの長さなのもあって、さくさく読み進められます。
先生と生徒、読者と(神)作家という朱葉と桐生の関係性は、らぶ方面もチラチラと匂わせつつ、基本的にはオタク友達というノリで。ふたりの会話を読んでいるときは、「あるある」「わかるわかる」となりすぎて、腐ってはいないとは言え自分も相当業が深いと思わず顔を覆いました。でもそれがとても楽しい。

WEB連載はまだ続いていて、最新話では二人の気持ちもちょっとずつ進展してるっぽい? 連載も追いながら、続編が書籍化されたらまたまとめて読みたいと思います。

作品名 : 腐男子先生!!!!!
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著者名 : 瀧ことは
出版社 : ビーズログ文庫アリス(KADOKAWA)
ISBN  : 978-4-04-734710-6
発行日 : 2017/6/15

『弁当屋さんのおもてなし ほかほかごはんと北海鮭かま』[喜多みどり/角川文庫]

角川ビーンズ文庫で作品を発表されていた作者さん、久しぶりの新刊は最近流行り(?)のお店&ごはんもの。恋人に二股をかけられた傷心も癒えぬまま北海道の札幌市へ転勤したOLの千春が、ふと立ち寄った路地裏の弁当屋『くま弁』で店員のユウと出会って――という導入から始まる物語。

冒頭で語られた千春が転勤する原因を作ったともいえる二股男とその相手の行動が気分悪すぎて、早く破局すればいいのにと心の底から思いました。本来は千春と同じく被害者のはずの相手も「ないわー、それはないわー」という行動を取ってくれやがるものだから、うん、まあ、ある意味お似合いのふたりと言えるかもしれませんがやっぱり早く(以下略)
まあ、そんな気分の悪い冒頭を超えれば、あとはほっこりする良い話でした。客の体調や気持ちに寄り添った特別メニューを提供する『くま弁』のお弁当は、近くにあったら通いたいと思うような美味しそうな描写が魅力的。登場人物はそれぞれに問題や悩みを抱えつつもどこにでもいそうな人たちで、そんな彼らとお弁当を巡るお話に、どこかあたたかな気持ちになりました。あと、千春とユウが徐々に親しくなっていく過程と、最後には客と店員という枠を一歩超えたような?雰囲気にニヤニヤ。

1冊読み切りでまとまっていますが、続いても無理がなさそうな幕引きでもあるので、この後の彼らの話がまたいつか読めると良いなと思います。

作品名 : 弁当屋さんのおもてなし ほかほかごはんと北海鮭かま
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著者名 : 喜多みどり
出版社 : 角川文庫(KADOKAWA)
ISBN  : 978-4-04-105579-3
発行日 : 2017/5/25