2016.03.29

『洋食屋じゃぽんの料理帖 ソップからはじまるフル・コウス』[左京潤/富士見L文庫]

 富士見ファンタジア文庫で「勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。」シリーズを刊行されていた作者さんの新作。ねぎしさんのイラスト効果もあって手にとってみました。

 時は明治、文明開化の世。身内を亡くし、維新前から続く家業の料理屋を従兄に乗っ取られた少女・柚子が、従兄を見返し「人を幸せにする料理」を拵える料理人になるために奮闘する、というのがざっくりしたあらすじ。
 さっくりと読めてなかなか面白かったです。あと、こういう料理を絡めた作品は流行っているせいかよく見かけますが、もともと柚子が日本料理を学んできたという設定もあって西洋料理そのままではなくちょっとアレンジしてあったり見慣れた料理でもちゃんと美味しそうな描写だったりするのが良いな、と。
 登場人物としては、ときに苦境に苦しみ失敗に落ち込んでも、また立ち上がって自分にできる最高の料理を作ろうとする健気な柚子は応援したくなるヒロイン。そんな彼女の周囲にいるのは、柚子が仇敵と嫌っている従兄の俊輔、ひょんなことから面倒を見ることになった記憶喪失の青年・周、亡き兄の旧友・朔馬、料理の縁で繋がった八坂院兄弟などなどタイプの異なる良い男が揃っていて、それぞれの立場から彼女の料理道に関わってくるのが、作者さんの言葉を借りれば「ちょっぴり昔の少女漫画風味」で実に楽しい。正体というか設定については隠す気ないだろうな勢いで情報が開示された一応メインヒーロー兼柚子のアドバイザー的立ち位置にいる周は、次巻以降で失われた記憶と抱える事情が徐々に明きらかになっていくんだと思いますが、この設定だと最後はどうなるんだろう……年齢的に実は○○とか▲▲とかいうのは難しい気がするしなあ。あと、ちょこちょこ描かれる描写から読者的にはわりとすぐおや?となる俊輔さん。柚子の父兄の死にも絡んできそうな、彼が内に秘めているものも気になるところです。

 さて、実家の料理屋を心ならずも後にし、縁あって任された洋食屋「じゃぽん」で働くことになった柚子。彼女の奮闘がまた近いうちに読めますように。

作品名 : 洋食屋じゃぽんの料理帖 ソップからはじまるフル・コウス 【 amazon
著者名 : 左京潤
出版社 : 富士見L文庫(KADOKAWA)
ISBN  : 978-4-04-070854-6
発行日 : 2016.3

2016.02.04

『営繕かるかや怪異譚』[小野不由美/KADOKAWA]

 只今公開中のホラー映画『残穢』の原作者つながりで本棚から引っ張り出してきました。小野不由美さんの「家」に関わる怪異の話。雑誌『幽』の連載6編をまとめたものということです。

 映画化された残穢の他にもゴーストハントや屍鬼等、面白いホラー作品を多数出されている小野さんですが、この作品は同じ怪異を扱った話ではあるものの、それ等とは雰囲気が違う作品でした。この作品で怪異を解決する役割を担っている尾端氏が営繕屋として繕い方を心得ている故、でしょうか。怪異を悪いものとして祓うのではなく、状況によって共生したり受け流したりといった方向で上手く収めていくので、全体的に優しい印象が残ります。それだけではなく、完全に消えたわけではない「疵」に、時に微かな怖さや物悲しさが残るのもまた良し。ちなみに個人的には「奥庭より」と「雨の鈴」が好きです。

 雑誌の方では連載が続いているようなので、今から単行本化が楽しみです。

作品名 : 営繕かるかや怪異譚 【 amazon
著者名 : 小野不由美
出版社 : KADOKAWA
ISBN  : 978-4-04-102417-1
発行日 : 2014.12

2016.01.09

2016年、はじまってました。

もう年が明けて9日も経ってるとか信じられない……ともあれ、いまさらですが明けましておめでとうございます。
ふと振り返ってみれば、去年は片手で足りるだけしか更新してないという事実に愕然としたので、今年は月一ぐらい更新を目標にしつつマイペースにやっていこうと思います。……去年も似たようなことを言ってた気がしますな←
そんなこんなで、今年もよろしくお願いいたします。

2015.07.27

『異世界食堂』[犬塚惇平/ヒーロー文庫]

 最近多い、「小説家になろう」WEB連載の文庫化作品。食事の描写が美味しそうというレビューをどこかで見かけて、発売後すぐぐらいに購入&読了してました。

 内容としては、週に1回、土曜日に異世界に『扉』が開かれる洋食屋「洋食のねこや」を舞台にした連作短編集、というところでしょうか。毎回、お店に来る客にスポットが当たるので、特定の主人公は存在せず(店主や常連等のレギュラーはいますが)
 中世〜近世風異世界の住人が、食に対するこだわりには定評がある現代日本の食事食べたら、そりゃ感動するだろうなあと思いつつ、こちらも様々な料理&それを食べる人の反応につられて、エビフライ食べたいーカレー食べたいーとなる感じ。……しかし、いくら趣味でやってるにしても限度があるというか、採算とれてるの?と疑問に思わなくもないです(笑) あと、お店の預かり知らないところで、異世界にもちょこちょこ影響与えることになってる(食生活とか個人から発展して国家間の関係とか)ので、そのあたりが次にどうなるのかという楽しさもありますね。

 ラストで新しい従業員が加わった異世界食堂、次はどんなメニューがテーブルに並ぶのか、今月続編が文庫化されるらしいので楽しみです。

作品名 : 異世界食堂 【 amazon紀伊國屋
著者名 : 犬塚惇平
出版社 : ヒーロー文庫(主婦の友社)
ISBN  : 978-4-07-411329-3
発行日 : 2015.2

2015.06.05

『テスタメントシュピーゲル2(上 / 下)』[冲方丁/角川スニーカー文庫]

 kindle連載に加筆修正の上、上下巻構成で発売されました、テスタメントシュピーゲル2文庫版。連載時に読んでいるので、さらっと感想。

 話の展開は、当然ですが大きくは変わらず。ただ、ところどころ表現が変わっていたり文章が増えていたりで、連載時よりもよりわかりやすくなってる印象でした。後半の雛が「彼」を奪取する場面が増えていないかと密かに期待したのですが、それはなくて残念。
 鳳・乙・雛、それぞれがそれぞれの形で事件と過去に対峙している状態ですが、乙と雛はスプライトの頃を思えばものすごく成長したなあ、と。でも、乙は日向やピエールといった、ある意味正の方向で導いてくれる相手の影響が大だけど、雛は……何度読んでも、彼女が取り戻した過去の記憶や揺籃状態でみる光景が痛い。でも、水無月や冬真のために怒ることができる彼女は危なっかしい所はあっても良い娘だし、なんとか救済されてほしいと思います。……某所の某人のところで就職するのがベストな気がする。
 もうひとり鳳は、敵の標的にされてしまい――徐々に身代わりになっていく記憶と、そんな彼女に向き合う冬真が辛かった。敵のユニットに支配された彼女がどうやって救われるのか。2のプロローグで描かれていた涼月との対峙がとても待ち遠しい。彼女たちだけではなく、水無月・冬真・吹雪の男の子三人組の影での奮闘や、ヘルガや州知事をはじめとする大人たちの戦いもそれぞれ読み応えありました。

 ラストは、復活した涼月による突撃開始。絶望的な展開が徐々に覆っていたところで、希望に至る最後のピースが揃ったというか、安心感が半端ない感じ。それにしても、くわえ煙草で言い放った「ダイヤって燃えるんだろ?」は痛快すぎました。

 果たして彼女たちの戦いがどんな結末を迎えるのか。彼女たちはどこに向かうのか――夏開始の3の連載がとても楽しみです。

作品名 : テスタメントシュピーゲル2(上 / 下) 【 amazon:上 / amazon:下紀伊國屋:上 / 紀伊國屋:下
著者名 : 冲方丁
出版社 : 角川スニーカー文庫(KADOKAWA)
ISBN  : 978-4-04-472911-0 / 978-4-04-103098-1
発行日 : 2015.05 / 2015.06

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