■ 2002.12月読書記録

 12/1 『天になき星々の群れ フリーダの世界』[長谷敏司/角川スニーカー文庫]

任務のため、辺境惑星の女子高に潜入することになった暗殺者フリーダ。同居人となったアリスという同い年の少女は、なにかにつけて彼女の内面を揺さぶる。そして、任務決行の日。突然の宇宙海賊の侵略が街を襲う。

 昨年発売されたデビュー作『戦略拠点32098 楽園』が凄く良かったので、今回も期待して購入。

 今回は『楽園』とはまた違う、どこか鋭角的で硬質な印象の話。前作が静かに心に染み渡る作品なら、今作はギリギリの状況で生き抜こうとする人々のドラマ(…と言うのは何か違う気もするけど)とでも言いましょうか。個人的な好みで言えば前作に軍配が上がりますが、今作も十分楽しめたと思います。

 気になった点。視点が頻繁に入れ替わるので少々読み難かったです。登場人物の数の差か、主要人物の周りがちょっとごちゃごちゃしていたような。あと、もう少しフリーダとアリスの交流(?)があったら良かったのになぁ、と。ただ単に私が読み取れなかっただけかもしれませんが、フリーダのアリスに対する憧憬(むしろ執着か?)がいまいち薄く感じられたので。

 独り言。アリスの性格というか存在自体が胡散臭いと思った私……こういうタイプの人間ってなんだか凄く苦手なのです……

 12/2 『消閑の挑戦者 パーフェクト・キング』[岩井恭平/角川スニーカー文庫]

しょっちゅう突飛な言動をする鈴藤小槙は、クラスで浮いた存在だった。彼女に好んでちょっかいをかけてくるのは、同じクラスの春野祥ぐらい。祥の意地悪に迷惑しながら、何事もなく日々を過ごしていたある日。彼女の住む街が天才少年・果須田裕杜の主催する「ゲーム」の舞台に設定され、ちょっとした偶然から祥のパートナーとして登録してしまったことから、小槙も生死をかけたゲームに巻き込まれていく。

 えーと、なんというか市街地を舞台にしたバトロワ?……とはちょっと違いますか。ひとつの街を舞台に繰り広げられる、天才たちの生死をかけたゲームなわけですが。設定に首を捻る部分などはありましたが、それでも勢いがあって楽しかったです。次回作にも期待。

 ついでに、かなりどうでもいいことですが。ヒロインのイメージが、いつの間にやら大阪(解説。大阪とは『あずまんが大王』というマンガに登場しているボケキャラ)で固定されてました。そういや大阪って、学校の勉強は駄目だけどなぞなぞは得意だったよなーとか思いだしたり。

 12/7 『海賊王の帰還 暁の天使たち3』[茅田砂胡/中央公論新社・C☆NOVELS FANTASIA]

 この3巻でいい加減に見切りをつけようかと思っていたのですが、どうやら4巻までは様子見を続けても良さそうという心境に。というかむしろ、この終わり方では買わざるを得ないというか……うーん、なんか騙されてるような。

 やっぱりキャラの思想には気に食わない部分が山ほどあるのですが、割り切って読めばそれなりに楽しめたような気がしなくもない。錯覚かもしれませんが……いやはや慣れって素晴らしいなぁ(棒読み口調)

 しかし今回の話、別にいらないのではという部分が多かった気がします。ルゥの子育て時代なんて本気でどうでもいいし(別に彼が嫌いとまでは言わないけれど、随所で作者の贔屓が目についてなんか引く) ちなみに、今回一番引っかかったのは実はリィだったり。デルフィニアの頃からgoing mywayな性格だったけれど、ここまで鼻につく性格じゃなかったと思うんですが……王様の存在が、それだけ大きかったということか(溜息) とりあえず、一言いうならば。ダンに対して企んでたことは、絶対過剰防衛とられるぞ。法律詳しくない私が見てもそう思うし。他、デル戦のときはお気に入りだったレティの存在にさほど魅力を感じなくなってる自分に気が付いて、なんだかショックでした。やっぱり、彼らには学園モノは向いてないのではと思います……魅力半減どころの騒ぎじゃないよもう。

 で、最後の最後になってようやくタイトルにもなっているお方が! おそらく次で果たされる女王たちとの再会が、なんだかんだ言いつつ楽しみです(つーか、むしろそれしか楽しみが無いという方が正確かも……)
 ……しかし、女王やダイアナが復活しても、その後どんな話を展開するつもりなのかが、やっぱり全く見えないんだよなぁ。

 12/28 『さみしさの周波数』[乙一/角川スニーカー文庫]

 『GOTH』が「このミス」2位にランクインし、いつの間にやらメジャーになってしまった感のある乙一氏の新刊。今回は短編集です。

幼馴染の「僕」と清水は、未来をある程度の確率で知ることができると自称する転入生・古寺に「どちらかが死ななければ、いつか結婚する」と告げられたことから、お互い意識してしまいぎこちなくなってしまう。数年後、二人は再会するが……(「未来予報 明日、晴れるでしょう」)

 いつもの角川スニーカーでの作風だなぁ、と。「予報」を聞かなければ彼らの関係は どうなっていたのかなとか、「予報」を聞いたからこそ微妙なつながりが生じたのかなとか。いろいろ考えてしまいました。

まとまった金が必要になった男。たまたま近くの旅館に泊まりに来ていた伯母の荷物を盗もうと決意し、まずは隣の部屋に忍び込む。壁に穴をあけ、そこから荷物にむけて手を伸ばすが、彼は思いもしないものを掴んでしまう。(「手を握る泥棒の話」)

 どこか間抜けで馬鹿馬鹿しく、明るい雰囲気の作品。一番読後感がいい話でした。最後の、彼女の笑いが小気味よかったです。

ある大学の映画同好会に保存されていたフイルム。偶然、それを見た女性が語る物語とは。(「フイルムの中の少女」)

 淡々と語られる少女の語りが、ホラーに転ぶのかミステリに転ぶのか。そんな不思議な緊張感を感じながら読み進めました。ラストは、個人的にはちょっと拍子抜けだったかも。

事故に遭い、全身麻痺に陥ってしまった男。唯一動く右手の人差し指と、残された右腕の感覚を通して、妻との交流は続いたが……(「失はれた物語」)

 今回の短編集の中では、かなりの異色作。黒ではないけれど、灰色といったイメージでしょうか。中盤まではいつものスニーカー風の話が展開されるのですが、結局は……なオチ。彼の取った行動は正に「自殺」で。それでも満足しているんだろうと思うけども、一抹のやりきれなさは残ります。

 とまぁ、こんな感じの作品集でした。今回は割と難産な作品が多かったようで、あとがきではそのことに触れられていました。それを踏まえて考えると、しばらく新作が読めないのは残念ですが、しばらく休んでまた書きたくなったら好きに書いて、それで面白い作品を読ませてくれればそれでいいかな、と思いました。はい。

 12/30 『スパイラルカノン エターナルナイト』[朝香祥/角川ビーンズ文庫]

 妖を狩るために妖魔と契約を交わし、一族から穢れもの扱いを受ける少年・香ノ倉悠惟と、妖寄せという特異体質で意外と策士な大学生・羽住一帆の物語、二冊目。今回は、悠惟の異父姉をはじめ一族のほかの面々も登場。

 というか、この作品の登場人物って……まともな性格の人、数えるほどしかいないのでは。特に悠惟の周辺(汗) いまいち健全な性格とはいえない一帆がまだまともに見えるし(まぁ彼の場合は、悠惟の影響か幾分性格に変化が起こってますが) 個人的には、一帆と綾瀬の険悪コンビの場面は割と面白がって読んでましたが。

 さて。敵対する存在もはっきり見えてきたことだし、今後の展開は普通に楽しみです。とりあえず、次は『キターブ・アルサール』の最終巻だそうですが。春ぐらいには読めるかな、と期待しつつのんびり待機します。しかし、『高原御祓事務所』の続刊は同人誌ですか……全く、これだから商業主義という奴は(遠い目)

 独り言。別に、もっとスプラッタでもいいと思ったのですが。やっぱり少女小説的には駄目、なのでしょうねぇ。

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