■ 2001.12月読書記録

 12/1 『月と闇の戦記1 退魔師はがけっぷち。』[森岡浩之/角川スニーカー文庫]

 数年前に発売された『月と炎の戦記』の続編。舞台は現代に移っています。

 今のところは「なにがなにやら」の一言。まぁ、「この巻の終わりごろにさしかかってようやくやっと話が始まったばかり」だと作者自らあとがきで仰っていますから、今回は登場人物の紹介というところなんでしょう。今後、どうなっていくのかに期待ですね(ついでに、早く『星界の戦旗』も書いて欲しいものです)

 話変わって。滋也&楓(一応こう呼んでおく)の関係は相変わらずのようで、その点は良かったです。前作の最後はなんか2人が前触れもなく急接近したという印象で、どうも違和感があったものですから。「今回いきなりくっついてたらどうしよう」とちょっと心配だったんで。

 独り言。ツユネブリが喋らないのがちょっと残念……でもこれはこれでかわいいかも。

 12/1 『戦略拠点32098 楽園』[長谷敏司/角川スニーカー文庫]

千年に及ぶ星間戦争の最中、敵が死守する惑星に一人降下したサイボーグ兵のヴァロア。彼がそこで出会ったのは、敵のロボット兵ガダルバと生身の少女マリア。惑星の調査をしながら2人と暮らすことになったヴァロアの心は、次第に変化していく。

 第6回スニーカー大賞金賞受賞作。裏表紙には「胸打つSFロマン」と書かれています。

 「さぁ泣かせてやるぞー」というつくりの作品ではありませんでしたが、本当に泣けました(涙) 物寂しく、でもあたたかみもある作品で。ほのぼのとした優しい世界の、残酷な真実。それを知った二人の兵士の選んだ道――ラストの一文には、とにかく胸が一杯になりました。ある意味で岩本隆雄さんと同じく(作品の質は違うけれども)良質のジュブナイルという印象。

 これがSFなのかどうかは私には判断できませんけど(まぁ、ロボットとか出てくるからSFだろうなと思う程度。SFファンの敵ですね(^_^;)良作だとは思います。是非ご一読あれ。

 12/1 『シャール・ラザラール 封印されし魔神』[流星香/角川ビーンズ文庫]

 購入しようか迷いながらとりあえず最初のページを開いてみて……即購入決定。うぅ、今更ながら私ってばイスラーム関係に弱すぎ(涙)

 気を取り直して本の紹介。要約すると、「千の魔神を生み出し、のちにそれを封じた魔術師・シャール・ラザラールにまつわる話を、スルターンに謁見した老人が語る」という『千夜一夜物語』風の物語。個人的には、ツッコミたいところはそれなりにあるのですが、あとがきで作者さんがちゃんとお断りを書いておられるので自粛いたします。

 う~ん、なんというか……「地の文」と「会話文」のバランスが悪い。地の文と幕間劇の部分は時代がかった、というか『千夜一夜物語』の訳文に似せて書いてあるのに、キャラの会話の部分はやたらきゃぴきゃぴしていたりして。それがどうにも居心地悪かったです。いっそのこと幕間劇の部分と老人の語る話の部分で地の文からスパッと切り替えてくれればこっちもそのつもりで読むから良いのに、と思います。

 話自体はそこそこ面白かったのですが、今後もこのノリで進まれると個人的には読むのが辛いかも(苦笑)

 12/3 『明日の夜明け』[時無ゆたか/角川スニーカー文庫]

一週間後に学園祭を控えた夜見月高校を大地震が襲った。崖崩れの上に電話も不通、さらに触れると激痛が走る霧に覆われ、校舎は陸の孤島に。取り残された数名の生徒たちは、校舎内を探索するうちに教師の尾造と先輩の松原の死体を発見する。

 第6回スニーカー大賞優秀賞受賞作。ジャンルは「ホラー風味のミステリのふりをした青春群像物」というところでしょうか(なんのこっちゃ)

 一人、また一人と見えない誰かの手によって……という結構使い古されたシチュエーションですが、なかなか読み手を惹きつけてくれて、最後まで飽きずに一気に読めました。ミステリとしても及第点ではないかと。

 最後のオチは、まぁこんなものかなぁという感じ。個人的には[凪那が過去、屋上から飛び降りた時に死んでいた]ほうが収まりが良かった気もしなくもないですが(酷) 純粋なホラーってわけでもないし、こういう甘いのもまぁ一興ってことで。

 12/10 『今夜はマのつく大脱走!』[喬林知/角川ビーンズ文庫]

 あ~、やっと見つかった。なんだか知らないけれど、このシリーズ発見率がやたらと低い。オンライン書店で買ったほうが早かったかも(-_-; ……まぁそんなこんなで。やっと捕獲できた「マのつく」シリーズ最新刊です。

 まずはシリーズの簡単な紹介。異世界に(なんと公衆トイレから・笑)召喚され、魔王に就任してしまった極々平凡な男子高校生・渋谷有利。彼と周囲の魔族たちのギャグ満載の話で、とりあえず笑いたい時には最適。一見ボーイズモノのような気配がありますが、この作品の場合はそれもネタなので危険はありません。

 で、今回。相変わらずいろんな意味で馬鹿な話でした(笑) もちろんそればかりじゃなくて、ちゃんと真面目な部分もあるのですが……でもやっぱり私的には、このシリーズのメインは小ネタですから。あと、今回はお気に入りな長兄の出番が多くて幸せでした。

 そしてラストは、これまでとパターン変更。次回、本当に予告通りの話になるのでしょうか? 楽しみ。

 あぁそれにしても。このシリーズ、これで三男坊が女の子だったら言うことないのになぁ(さめざめ)

 12/19 『鬼童来訪 導の章』[一条理希/徳間デュアル文庫]

 『蓬莱の章』を読み終わって、「さて感想書くか」とパソコン起動させて……『導の章』の感想を書きそびれていたのを思い出しました。 まぁ、9月は溜めまくってたレポート作成に追われて、他の本の感想もほとんど書いてませんでしたからねぇ(遠い目) ……個人的な事情はさておいて。このまま放っておくのも気持ちが悪いので、簡単に感想行きます。

 基本的には、これまで真那が信じていた事柄が、次々と否定されていく展開です。今回明らかになった泰冥の設定は、正直ちょっと想定外。○○に縁の人物だろうとは思っていましたが、本人かい!みたいな。あけびはあけびで、「それはありですか」という設定が用意されていて。正に急展開、という巻でした。

 12/19 『鬼童来訪 蓬莱の章』[一条理希/徳間デュアル文庫]

 さて、『鬼童来訪』最終章です。半分ぐらいは泰冥の過去、残り半分ぐらいは破滅しつつある世界での真那と泰冥、土神が「最後の娘」と呼ぶあけびという謎の少女、奇しくも彼女の体に宿った真那の師にして想い人・守音、それぞれの行く末が描かれています。

 泰冥……なんか某皇帝を思い出します。死者の言葉に縛られつづけていたということが、そう思わせるのでしょうが。それにしても、結構徹底して自己中心的な思考の持ち主でありながら、中途半端に善人というのがなんとも。でも少なくとも、病姫に関してはあんたに文句を言う資格ないと思うぞ。

 それにしても、真那と泰冥、そして守音は……結局最後は救われた事になるのでしょうか。だとしても、完全に納得は出来ません。為す術もなく殺されていった多くの人々はなんだったんだ、と言いたくなる……。

 この『鬼童来訪』という物語、新たに始まった世界で創世神話として語られている物語、なのでしょうか。今度はこんなに哀しい終末を迎えることがない様に、との願いを込めて。

 12/21 『サムライ・レンズマン』[古橋秀之/徳間デュアル文庫]

 アメリカのSF作家、E.E.スミスの代表作「レンズマン」シリーズの外伝として執筆された作品、とのことです。

 私は「レンズマン」シリーズは全くの未読で、古橋さんの名前に惹かれて購入したのですけれど、もう無茶苦茶面白かったです!いかにも洋モノという、設定を基盤に展開される物語(実際に文体も翻訳調に似せてある感じがする)でも、古橋節は健在。なにより、悪人がもう弁解の余地ゼロなほどの悪人というのが最高。

 作者オリジナルのレンズマン・クザクは何というか……外国人から見たなんか間違えてる侍、という感じですね。いや、それも面白くていいのですけど(でも、すぐ切腹しようとするなってば・笑) そんな彼と、「山猫」キャットとのコンビもいい感じ。あと、レンズマン・ジョナサンとアシスタントたちの見かけにノックダウンされましたわ(^_^; ……こほん。えっと、未読のために断言は出来ませんが、本家からの登場人物と作者オリジナルの登場人物の噛み合いも上手くいってるのでは。少なくとも違和感はあまりなかったです。すんなり、「こんな人がいるんだな」と了解できた感じ。

 この古橋版に続き、創元SF文庫から本家の新訳版が発売されるとのこと。絶対に購入しようと心に決めました(単純)

 12/26 『薬師寺涼子の怪奇事件簿 クレオパトラの葬送』[田中芳樹/講談社ノベルス]

 一体何人ぐらいが、今年中に発売されると信じていたでしょう。ちなみに、私は全く信じておりませんでした(笑)

 今回も天下無敵のお嬢様・薬師寺涼子とその下僕・泉田君が豪華客船で起こった奇怪な事件に挑みます。舞台が豪華客船なのできっとタイタニックごっこをやってくれるに違いないと信じてたのですが、これは残念でした(←ヘンな事期待するな) そういえば、悪役のモデルは、判りやすかったですね~。しかしいいのだろうか、あの扱い(苦笑) まぁ、フィクションだからいいのか。

 泉田君とお涼の関係は……進展した、と言ってもいいのだろうか(悩) 微妙に進展してる気もしなくもないけど。でもとりあえず泉田君。君、いくらなんでも鈍すぎ(そんなに命が惜しいのか?・笑) 1巻で別れたという彼女の気持ち、分からなくもないですよ。これは。きっと日頃からの積み重ねがあって、それが「足が長くなる云々」の発言で爆発したんでしょうよ(しみじみ)

 独り言。作中で例の事件にちょっと触れられていたって事は……執筆期間2ヶ月弱ってところか。お父さん、やる気だしたらできるんじゃないか。なら頑張って未完作品片付けてよ。もうこの際、『アルスラーン』と『創竜伝』だけでもいいから(真顔) そういえば、来年1月『七都市』が出るって話は本当でしょうか。『KLAN』形式で行くって聞いたのですけど。

 12/28 『エルゼリオ 遠征王と薔薇の騎士』[高殿円/角川ビーンズ文庫]

パルメニア国王アイオリア一世(女性)の愛妾(勿論、女性。アイオリアは無類の女性好きだったりする)の席が一つ空いた。早速、国を挙げての美女探しが始まり、自らも美少女探しに赴いたアイオリア(通称オリエ)。彼女が旅先で見出した少女は、王騎士ジャックのかつての相棒、ゲイリー=オリンザの養女だった。

 『遠征王と双刀の騎士』の続編。シリーズ化が決定したのかな? 決定したとしておこう。よかったよかった。

 えぇと、今回は光源氏計画……じゃない、色々と複雑な事情があって素直になれない年の差カップルの恋の行方と、パルメニア領内での被差別民の問題、それを利用したホークランドの侵攻にオリエが対処する、という感じ。文章も上手くなってるし、ひらがな多用もなくなって、個人的には大分読みやすかったです。あぁ忘れちゃいけない、コック軍団も大活躍でした(笑)

 最後の展開は、意外というかなんというか。オリエもちゃんと女性なんだな、と(←その感心の仕方はどうかと……) しかし、オリエと彼(現在のオリエに対しても「わたしのプリマジーナ」と言える性格が素晴らしい)の再会だけでもややこしいのに、ナリスも暴走するわ(オリエが彼に言ったことって……まさか、シレジア侵略の際に何かやったとか?)「最愛のいとこどの」ことゲルトルードもさらりと怖いこと言ってるわ……登場人物たちの愛憎渦巻く関係(一部誇張あり)が、今後どのような流れになっていくのか気になるところ。

 そういえば、オリエってこの時点ではまだエヴァリオット所有してなさそうだけど(前作未読の方に簡単な解説。「エヴァリオット」というのは剣の名前。精霊が宿っていて、所有者にはある呪いがかかると言われています) 一体、何時頃彼の剣と巡り合うんだろう……まぁなんにしろ、最終的にあれを持つってことはある一面でのハッピーエンドは望めないんだろうなぁ。

 以下、作品に直接関係ない呟き。あまり面白いことではありませんが……あとがきに一箇所だけ、どうしても気に触る表現があったんですよ。細かいかもしれないけど、「なんだかなぁ」という気分になりました。本当にそういう状況にいる人たちのことを考えると、あの表現は少し不謹慎じゃないかなぁ。偽善かもしれないけど、私はそう思う。ついでにもう一つあとがきネタ。ラマダーンは、終わると逆に太ってることもあるという話ですから、ダイエットの意味には使えないのでは、と思いました(笑)

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