■ 2001.11月読書記録

 11/1 『氷菓』[米澤穂信/角川スニーカー文庫・ミステリ倶楽部]

何事にも積極的に関わらない「省エネ」少年・折木奉太郎は、海外放浪中の姉から届いた手紙(の命令)をきっかけに、廃部寸前の古典部に入部する事になった。仲間達との部活動の中で小さな謎に遭遇し、なりゆきでそれを解き明かしていく羽目に。

 「青春ミステリ」と銘うたれてますが、まさにそのとおりという出来ばえの、地味に良くできたミステリ(←褒めてます) 雰囲気的には加納朋子さんに近い印象でしょうか。

 各章ごとに小さな謎を解いていく形式の作品なのですが、その中でさりげなくメインの謎に関する事柄が隠されていて、それが最後にはきちんと回収される。当たり前といえば当たり前のことなのですが、「やるなぁ」と。全体を通してみると、ほとんど無駄がないのが凄い。正直なところ、期待以上の作品だったので逆に吃驚してしまいました(笑)

 ……しかしこの作品、講談社ノベルス辺りから出ても違和感なさそう。というかむしろ、あの辺の下手なのよりよほどよく出来てる気がする(笑)

 11/2 『死神見習い修行中!』[樹川さとみ/角川ビーンズ文庫]

 題名からコメディっぽい作品なのかなと思っていたのですが、意外とシリアスなところのある話でした。

 話の途中には、ちょっとうるっとくるエピソードもあり、逆にふっと笑えるエピソードもあり。全体としてはなかなか良く出来た作品ではありましたが、「あれは結局どういうことだったんだ?」と思う部分もちらほら。まぁ、私が読み落としてるだけかもしれませんけど。また、ラストはちょっと「え、何でそうなるの?」と思う展開で。個人的には、不満とまでは言わないけれど、ちょっとう~ん?という感じでした。

 あと、少し展開が駆け足な気がしましたね。分冊して、もっとじっくり書き込んで欲しかったかな。

 11/9 『パラサイトムーンIII 百年画廊』[渡瀬草一郎/電撃文庫]

無名の天才画家・グランレイスの力を受け継いだ――正確には迷宮神群の一つ、虹の屍・オルタフの影響を受けた高校生・希崎心弥と、彼の幼なじみでこちらは神群・ハタニアスの影響で異能を手に入れた露草弓。徒帰島で九死に一生を得た二人は、「キャラバン」の援助を受けながら日常生活を再開した。しかし、ある目的のために動く異能者――満月のフェルディナンの思惑が、彼らを絡めとろうとしていた。

 ただ在るだけで人間に様々な影響を及ぼす『迷宮神群』を巡る物語――「パラサイトムーン」の第3巻。あとがきにも書かれているように、1巻メインキャラの一人・希崎心弥を主役に据えての、前2巻の続編という体裁になってます。

 心弥の能力が戦闘向きじゃないってのもあるでしょうが、今回は地味だけれどしんみりとしたいい話に仕上がってます。また、これまで「腕は立つけど役立たず」だった籤方君(というか、彼の持つ『真女』)が、フェルディナンに関わりがあるらしいと分かったりして、今後の展開も気になるところ。そういや、エスハっていい人っぽいところもあるけれど基本的にはやっぱり愉快犯なんですね。最後、フェルディナンに対してなんか意地悪だったし。

 あと、このシリーズでは毎回文句言ってるイラストですが、これまでと使用方法が違っています。やっぱり表紙は微妙に買うの恥ずかしいけれど、中は……まぁこれなら我慢できなくもないかな……でもやっぱ、渋い小父様の書ける人がいい(何様だ、お前は) ……もしかして私以外にもアンケート葉書に苦情書いて送る人が多かったのかな(←送ってたんかい!)

 さて、次は待望の『陰陽ノ京』の続編のようです。年明けが楽しみだなー。

 11/12 『コンビネーション』[谷山由紀/ソノラマ文庫]

 密かにファンの谷山由紀さんデビュー作(現在絶版) 通常入手困難な作品は紹介を避けるようにしているのですが、この作品に関しては復刊運動の一環という事で、大目に見てください。

 では、作品紹介。物語の中心にいるのは、名倉という一人の青年。彼は、ドラフト5位でとあるプロ野球チームに入団、3年後にその才能を開花させた将来有望な選手です(勝手な印象ではイチローさんみたいな感じかなぁ) その彼の成長していく姿を、六人のチームメイトと一人の少女の目を通して描いた、連作短編です。

 泣けます。名倉を語る人々、それぞれの人生に。本人の気持ちや努力だけではどうにもならない、シビアな現実に。彼らが自分の道を見定める、その過程に。全編通して、とても残酷でそして優しい物語が紡がれていて。とにかく、極上の物語。……う~ん、この感動を上手く表現できない自分が恨めしいです。

 えぇと、上手く紹介できないくせに、こんなことを言うのもどうかと思うのですが。とにかく、この作品はこのまま埋もれさせるにはあまりに惜しいと思うのです。ですから、もしよろしければ『コンビネーション』復刊の為、ご協力の程をよろしくお願いします!

 11/17 『魔鏡の理 巻之一(上)ちはやぶる』[篠崎砂美/ファミ通文庫]

 ファミ通文庫で『ファイアエンブレム』(SFC)のノベライズを書いてる方のオリジナル作品。白状しますと、イラスト買い(殴) こほん。えっと、基本としては和風な世界設定ですが、時折(?)西洋なモノも顔を出します。とはいえ、和洋折衷というほど「洋」の要素は雑ざってない。まぁ、そういう世界で旅を続ける「狩籠師」(魔を鏡に封じる術士)の滅紫とその弟子・輝耀の物語。ちなみに、全6冊予定とのことです。

 上下巻構成ということも手伝って、まだ内容というか話が掴みきれない感じ。でも、つまらないってこともなかったので、とりあえず次は買う。その後は……下巻を読んでから判断、ですかねぇ。

 話変わって。登場人物は今のところ、玲瓏姫玻璃が一番贔屓ですね~。こういうちょっと偉そうなお姫様って割と好きなので。彼女、最終的には輝耀と……って、無理かなぁ。

 11/20 『クロスカディア1 月メグル地ノ来訪者タチ』[神坂一/富士見ファンタジア文庫]

 『スレイヤーズ』の作者、神坂氏の新シリーズ。主役は自称悪人&記憶喪失の少女・メイと警備兵見習の少年・シン。

 う~ん。今のところは、普通に面白い作品としか言いようがないです。目新しい事と言えば、シンの腕がまだ未熟というぐらい? ヒロインは「悪人」という割には……これならリナの方がよっぽど悪人だろう、という印象だし(笑) まぁ、それなりに面白くなりそうとは思いますけど……やっぱり、今後どう展開するかですね~。適度に期待しておきます。

 ところで。今度の魔王は残る2つのうちどっちなのでしょうかね(←すでに決めつけてるし。)

 11/22 『D/dレスキュー』[一条理希/集英社スーパーダッシュ文庫]

 スーパーファンタジー文庫の「サイケデリック・レスキュー」シリーズが、レーベル廃刊に伴いスーパーダッシュにお引越し。シリーズ名・イラストを一新しての再スタートです。

 今回はとある建設会社を標的にした連続爆破事件を未然に防ぐ為に、メンバーが行動。また、高校生2人が爆弾を持たされていて……という状況。言ってみれば、強要された自爆テロ……いや、テロって言葉はおかしいかな。でも、他に適当な言葉って思いつかないし……まぁなんにしろ、酷い話だってことで。

 話的には、割と普通。「サイケデリック」シリーズ最終巻である『クリムゾン・インフェルノ』が凄まじかったから、余計そういう印象が残ります。とはいえ、前シリーズから継続している謎も残っていますし、今後どう展開していくのか気になるところ。

 独り言。個人的には綺堂さんわりと好きなんですが……やっぱり少数派でしょうか。

 11/26 『スカーレット・ウィザード外伝 天使が降りた夜』[茅田砂胡/中央公論新社・C☆NOVELS FANTASIA]

 別れの前にジャスミンが何を思っていたのか。彼女を取り戻す事を誓ったケリーのその後は……というのが、この外伝の主なストーリー。また、関係を匂わす程度にとどめると思っていた「ラー一族」からあの方が登場して、完全に『デルフィニア戦記』とリンクしちゃいました。

 茅田さんの作品は基本的にノリで楽しむものだと思ってますので矛盾点とかがあっても気にしない事にしています(というか、しました) でも今回はさすがに御都合主義なのでは……と感じる部分がちらほらと。まぁ、「天使が登場したらなんでもありか」とは思いますけどね。

 しかし、次回作。もしかして闇・太陽・月と怪獣夫婦の共演になったりするのでしょうか。だとしたら……孫ちび君はまだ性格がわからないからなんとも言えないけれど、とりあえず常識人なちびすけ君は苦労しそうですね(笑) あと、難しいかもしれないけれどレティーが何とか復活して色々引っ掻き回してくれれば嬉しいかも。さすがに王様は無理だろうけど、彼に関しては可能性がありますものね。

 11/30 『流血女神伝 砂の覇王5』[須賀しのぶ/集英社コバルト文庫]

 「流血女神伝」エティカヤ編の第5巻。ちなみに、エティカヤ編はあと3冊で完結するそうです。
 今回はわりと中継的な話ですが、それでもやっぱり面白かった。もちろん、以降の展開に向けての布石もいろいろと置かれていますしね。次が待ち遠しいったらありません。

 登場人物の話。ビアンへの好感度が上昇。自分の選んだものが不毛な道だと承知の上で進んでいく、方向性は間違っているかもしれないけどその強さは素敵。カリエも作中で似たようなことを感じていましたが、「バルアン様命!」になってるナイヤと比べると一層ビアンの強さが際立ちます。それと、カリエがドミトリアスとグラーシカに誤解を受けなくてすんだ&ナイヤとの関係が破綻せずに収まったのは本当に良かったのですが……サジェが……ねぇ(涙) なんと言うか、今回は後宮の女性陣を通してこの世界で「生きている」人たちをまざまざと見せつけられた、そんな気がします。

 今後気になる事。当面の問題(ルトヴィアの再生、エティカヤの後継者問題etcetc..)も勿論ですが、ザカールの2人がやっぱり気になってます。それぞれの思惑は違うようですが、一体カリエは彼らにとってどのような役を持った駒なのか。これはシリーズの核だろうから、そう簡単には明かされないでしょうけど……うぅん、今のところは予想も難しい。それと、なんだか気になるのがドミトリアスの元恋人のサラさん。なんかこのまま闇に落ちていきそうな気がしなくもないんですけど、大丈夫だろうか?(汗)

 以下、馬鹿話。やっぱりバルアンがカッコイイです(惚) 一時ラクリゼ姐さんに溺れたりもしましたが、それもまぁ良し(盲目状態) なのに須賀さん、あとがきで「エティカヤ編が終わったら、今のように出てこない」なんて寂しい事を仰ってます。うぅ、こんなに存在感のあるお方なのに。いや、「必要な時に必要な人」というその姿勢は素晴らしいと思うのですけど、でも寂しいです(涙) いっそ今のうちに、本当にカリエとくっついてくれないかなぁ。……あ、でもカリエにはミュカもいるか。うぅむ、難しい(←エドの存在忘れてないか……?)

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