■ 2001.6月読書記録

 6/1 『きみにしか聞こえない -CALLING YOU-』[乙一/角川スニーカー文庫]

 乙一氏、角川スニーカー文庫では二冊目の短編集。表題作他、2編が収録されています。いやぁ、どれも堪能いたしました。満足(^-^) で、せっかくなので(←何が?)各作品にコメントを。

人付き合いが不得手で、携帯電話も持っていない女子高生・リョウ。彼女は理想の携帯を頭に思い描いて、友人のいない寂しさを紛らわせていた。しかしある日、空想上の携帯に電話がかかってきて……(『Calling You』)

 内向的な高校生2人の、幻の携帯を通じての交流と突然の別離。ラスト近くになると、もう涙腺緩みっぱなし。最後のリョウの独白にも、また涙ぐみました。少しやりきれなさを感じはしたけれど、成長したリョウの姿は救いでした。

暴力を振るう父親が不治の病で入院し、母親は失踪した。その家庭環境から精神的荒廃の恐れがあると、特殊学級に入れられた「オレ」。彼に遅れることしばし、同じく特殊学級に編入してきたアサト。ある時「オレ」は、アサト自身も気付いていなかった不思議な能力を目の当たりにする。(『傷 -KIZ/KIDS-』)

 大人の身勝手で傷つき、それでも涙を見せずに生きる「オレ」も、呆れるぐらいに純粋さを保つアサトも哀しい(;_;) 今後、彼らには幸せになって欲しい。万が一、幸せになるのに資格がいるとしても。彼らは十分過ぎるほどの代償をその幼さで払ったと思いますから……

列車事故で愛する存在――家を、親を捨ててまで思いを貫こうとした恋人を失った「私」の心は、深く傷ついていた。そんな「私」が、病院近くの森を散歩中に歌の聞こえる植物を見つける。その歌声に興味を覚えた「私」は、その花を鉢に移して病室に持ち帰る。やがて花のつぼみが綻んだ時、そこにあったのは小さな少女の顔だった(『華歌』)

 最後で、「引っかかったーっ!!」と叫んだのは、果たして私だけでしょうか?(苦笑) まぁそれはともかく。ちょっと地の文を変えてあるだけなのに、レトロな雰囲気が漂うのだから凄い。「スニーカー読者層には受けないかも」というようなことがあとがきに書かれていましたが、乙一氏のファンとしては素直に良い作品だと感じました。

 さて。あとがきを読む限り、しばらく新作は発売されないのかなぁ。作品の質が下がるよりは百倍いいですけれど、残念だなぁ。うぅむ、ここはやはり編集さん。上海蟹でも何でもいいから美味しいものを作者に奢って、定期的に新作を!(笑いつつ目が真剣)

 6/9 『上と外1 素晴らしき休日』[恩田陸/幻冬舎文庫]

 感想を書いてなかったけれどお勧めなこのシリーズ、ちょっと引っ張り出してきました。短めの感想で行きます。

 「ホームコメディ?」と思って読み出したのですが……そんな、ほのぼのしたものじゃあありませんでした(^_^; 最初のほうはよくありそうな話の進みなのですが、あのラスト。「ちょっと待てっ!?」と叫んだのは、私だけではないはず。

 6/9 『上と外2 緑の底』[恩田陸/幻冬舎文庫]

 練&千華子・ジャングルでサバイバル編。1巻の終わりが終わりだったため、どきどきしながら読みはじめたら、日本の家族がほのぼのしてる場面から。初読の時は、「それはそれとして、子供二人はーっ!?」と、ひたすらやきもきしながら読みましたな。

 ジャングルを彷徨う2人、冷静に考えるとかなり悲惨な状況の筈なのですが。手持ちの装備だけで前向きに頑張ってくれるからか、不思議とからっとした、楽しそうな感じまでしてきます。かといって、自分があの状況に叩き込まれるのは絶対に嫌だけど。

 6/10 『上と外3 神々と死者の迷宮(上)』[恩田陸/幻冬舎文庫]

 この巻でも、練&千華子のサバイバルは続きます。一方、子供たちと離れ離れになっていた賢&千鶴子ペアが行動を始めるのもこの巻。そして、また最後は……完全に非日常の世界に巻き込まれてしまった練に合掌。

 6/10 『上と外4 神々と死者の迷宮(下)』[恩田陸/幻冬舎文庫]

 千華子を人質にとられ、先住民族の「成人式」への参加を強要された練。果たして練は、無事に生還できるのか。一方、千華子もとんでもない状況に……というのがこの巻。まさに手に汗握る展開――を通り越して心臓に悪い。

 しかしとりあえず、「ニコ、あんた何者?」の一言に尽きる気もする。5巻を読んだ今でもよく分からんし(苦笑)

 6/11 『上と外5 楔が抜ける時』[恩田陸/幻冬舎文庫]

 さて。今月発売された第5巻。革命新政府の考えはなかなか面白そうだなぁ、などと思ってみたり。

 子供たちをなんとか見つけ出そうと四苦八苦している賢&千鶴子。これまで役立たず状態に陥っていた千鶴子が、「できる女」の面目躍如とばかりに行動してます。個人的に、「絶対に子供たちを取り戻して見せる」という決意は嬉しく思いました。
 一方、練の場面。ろくに気配を感じさせずに現れる『王』の存在にもう冷や冷やさせられました。

 ラストは、ところどころで出てきていた描写で、「……まさかね……?」と思ってはいたのですが、まさか本当にくるとは。……というか、もしかしなくても最大級のピンチじゃないか(汗) ここまできたら、皆生き残れよー。

 6/12 『紫骸城事件』[上遠野浩平/講談社ノベルス]

 前作『殺竜事件』が期待ハズレだったので買おうかどうか迷ったのですが、結局は購入。今回は、双子の性悪戦地調停士・ミラル&キラルが京極堂……もとい、探偵役。

 ミステリとしてはやはり首を捻りますが(そもそもこの作品世界では「何ができて何ができないのか」がいまいち分からないのがなぁ)、それでも意外と面白かったです。……前作と違って、あまり期待してなかったからかも(苦笑)

 双子は思っていたより普通な性格だな、という感じ。特に姉は前作の情報から全然喋らない、不気味なキャラなのかと思ってたけど、そんなことないし。でも、この双子は割と好きかな。少なくとも、前作の3人組よりは。
 しかし姉。何故に彼に惚れてるんだろう……? 知り合った当初、仲が険悪でなかった頃にでも何かあったのだろうか。

 6/20 『百星聖戦紀9 宿命の絆』[ひかわ玲子/富士見ファンタジア文庫]

 動乱の時代を迎えようとしている大陸に、新たな時代を切り開く百の星が集うという、スケールの大きな物語。これまでに何度か新刊予定に載りつつも、その度に延期になっていたので心配していたのですが、今回はちゃんと発売。よかったよかった。

 今回はついに<イルディガルの双頭の鷹>アクアレードとルヴィラードの再会が。ここまで来るの、長かったなぁ(しみじみ) そして、ルーンガルド帝国から亡命してきたゴード・ジマー将軍も、ルヴィラードの妹姫・フェリアナと出会います。なんのかんの言いつつリアルタイムで読んでるから、フェリアナの変化が嬉しいというか何というか。そう思う一方で、フェリアナの乳兄弟・リュードが鬱陶しく感じて仕方がない……彼女の立場からすれば、ああなるだろうとは思いますが。それでも度を超した過保護は、見ていて少し気分が悪くなるのです。

 ところで、今回出てきたスラカトゥス将軍。彼も百星なのですかねぇ? 個人的には、そうであってほしいのですが。違っても、敵役としてのレギュラー化希望。……いやぁ、結構好きな感じっぽい小父様なので(^_^ゞ 

 さて次巻は……上手くいけば、ゴード・ジマー将軍とアクアレード&ルヴィラードたちが出会うのでしょうか。それとも、いきなり別の国に飛ぶとか!?……それはさすがにないだろうけど。なんにしろ、何時頃発売になるのか期待して待ってます。

 6/30 『ミドリノツキ(上)』[岩本隆雄/ソノラマ文庫]

 昨年冬眠からお目覚めになった作者さん、今回は初の上下分冊&これまでの3部作と異なる世界観の物語です。

 珍しく(むしろ初めて?)純粋に「嫌なヤツ」が出てきたりしてますが、作品の雰囲気自体は相変わらずなので、安心して読めます。この方の作品は「それはないだろう」と言いたくなる位のまっすぐさが良いですね

 「早く続きが読みたいー」と読後にのたうちまわってしまったほど、なんとも極悪なところで終わってます。ようやく主人公が話の本筋に絡みだして、話が盛り上がってきたところで「下巻へ続く!」ですし。

 ミリセント周辺の人間関係は大体想像つくのですが……でも、なんだか辻褄が合わないところは出て来るんですよね。まぁ嫌でも下巻で種明かしがあるでしょうから、それまであれこれと考えて楽しんでおきます。

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