人間・キノと言葉を話すモトラド(二輪車のことらしい。この場合はバイクと思われる)・エルメスの旅を綴った、短編連作集第3巻。
これまで同様に淡々とした描写に変わりないのですが、なぜか今回は前の2冊のように『毒のある童話』という気はしなかったです。話の雰囲気はこれまでと変わってないと思うし、作品のクオリティが落ちたというわけでもないんですけど……本当に何でだ?
今回は、どの話もキノが冷めたままなのでかなり淡々と進行しましたが、それでも結構面白かったです。とりあえず、「差別の無い国」でのキノ&エルメスの発言が気になります。一体、「×××××」って、なんなんでしょうね? 実際に文字で表されたら「これが無いの?」と叫びたくなるようなモノだろうと、見当はつきますが。なお、この国のホテルや食堂の状況、想像しかけて固まりました。確かに、世の中には知らないほうが幸せなことってありますよね……
「機械人形の話」。最後のキノの行動には、ちょっと「おいおい、もう少し何か言ってやれよー」と思いましたわ。でも、あそこで下手に同情したりしたら、逆にキノらしくないか……しかし、う~ん……(以下、延々と悩む)
あまり続くと良くないんじゃないかな~と今でも思ったりするけれど、やっぱり個人的にはこのシリーズ気にいってますので、彼ら2人の旅の行く末を、最後まで見届けようとは、思います。
……ところで、師匠関連の話とシズ&陸の話は、レギュラー化決定なのでしょうかねぇ? それなりに面白いから別に良いけど。
遠い未来の宇宙を舞台に、2つの国の騒乱に乗じて野望の達成を図る『銀英伝』の帝国主従コンビ女性Ver.の物語(え、違う?)第2巻。
最初の方は、割と素直に面白がって読んでたんですけど、最後の「あれ」は……う~ん……戦争は綺麗事じゃないと分かってはいるけれど……でもやっぱり、あれはいくらなんでもダメでしょうよ。国益もなにもあったものじゃない分(あったらいい、と言う訳じゃないけど)、『銀英伝』のヴェスターラントの虐殺より性質が悪いように思える。この一件で、私の中でのエレオノーラへの好感度、ガタ落ち。今後、評価が持ち直すといいんだけど。個人的に彼女には、例えば『十二国記』の珠晶ぐらいの器量を期待してるのですが、道は遠そうです。
まぁ、それ以外は平均的に面白かったかな、という感じでした。一つ文句をつけたいのは、主人公に怪しげな出生の秘密とかは必要なかったんじゃないか、ということ。なんか、「うわ、またパターンな設定」とか思ってしまいましたし(苦笑)
余談。一部分だけの引用だと、ハンチントン氏の説って訳がわからないというか「それがなに?」と思ってしまうのは、果たして私だけなんだろうか。
約10年前に新潮社から発売され、星雲賞を受賞した作品のリメイク。なかなかに正統派のボーイ・ミーツ・ガール。
今回も読んでて思いましたけど、菅さんの作品ってどれも凄く絵画的というか、文章からイメージする情景が、この上なく綺麗なんですよねぇ。今回の話では、〈螺旋の街〉、〈昼の野原〉、そして〈パラサの山〉……その姿形を想像すると、思わず溜息をついてしまうほど美しい。
主人公のイェノムは、最初の印象は「強がっちゃって、かわいいなぁ」だったのに、気がついたら「おぉ、なかなかかっこいいじゃない?」と見る眼が変化してました。……最初から強い主人公もいいけれど、こうやってちゃんと時々つまづきながらも成長する主人公の姿は、読んでいて気持ちがいいです。脇役では、〈翅の女主人〉やヤパンも良かったけど、ジョイノーサが良い女でした。
しかし、最近菅さんのファンになったばかりなので、過去の作品を読みたくてもなかなか発見できないのがちょっと哀しい(涙) やっぱり、デュアル文庫が頑張って全部の作品を復刊してくれる事を願います。(いやもう、切実に)
海辺の街を舞台にした、ハードボイルド小説(だと思ってるんですが。実際のところはどうなんでしょう?) 今回の語り部は、元弁護士で現在漁師の木野という人物になってます。ちなみに、何でこれを紹介するかといえば。……何でだろう。次巻が文庫化したときにわめきたいからか?(←迷惑)
さて。しばし黙祷。………………全く、北方さんの作品ってなんでお気に入りな人から退場するのかなぁ(しくしく) さすがに、姫島のおじいちゃんは大丈夫だと思うけど、水村さんとか大丈夫なんだろうか? ちょっと不安……別シリーズですが、絶対大丈夫と思っていた人があっさり消えたということがあるので、いまいち安心できませぬ(涙)
さぁ、5巻まで文庫化されたということで……あとは、去年の7月に発売された6巻目『されど君は微笑む』の一刻も早い文庫化を希望するのみ。……だって、「ブラディ・ドール」シリーズ好きなんですもの。6巻は社長と坂井さんだけとはいえ(……あ、安見もいたな)、ゲスト出演してるの嬉しかったし(そのために「ブラディ・ドール」外伝としか思えなかったんですが・苦笑)、早く手元に欲しいのですよ(←じゃ、ハードで買えって)
92年、新潮文庫からファンタジーノベル・シリーズ(最近リメイクされた『星虫』『イーシャの船』『メルサスの少年』も、このレーベルから出てたんですよね)で発売され、98年に改訂版がハードカバーで発売。今回はその改訂版の文庫化です(ややこしい) なお、この作品が恩田陸さんのデビュー作。別作品にも登場している、関根一家の初登場作品ともいえますね。
やはりこの作品の見所(?)は中盤の「呼びかけ芝居」ではないかと。私はあまり怖がりとはいえないタイプなのですが、もしも自分がこの場面に叩き込まれたら……ちょっと逃げ出したくなるかもなぁ。
しかし、改めて読んで思ったんですが……結構謎が残ったまま終わってますな。この話……。まぁ、その辺りの余韻というかちょっとぼかしたような感じが好きなんですけどね。