■ 2000.8月読書記録

 8/10 『冥王と獣のダンス』[上遠野浩平/電撃文庫]

 「ブギーポップ」シリーズの上遠野さんの新作。これもシリーズ化するのでしょうか?

 ……作品全体としては悪くないと思うんですが、私はあんまり好きなタイプの話じゃないです。多分理由は、「主人公にどうにも魅力を感じない」、「何故彼だけがもてるのかが分からない」からだろうけど。

 この作品のメインは、やはり主人公のトモルと夢幻、2人の恋でしょう(これでもしも「いや戦争がメインなんだ」と言われたら、いくら私でもキレるぞ) お互い一目惚れ、というのは、多少出来すぎのようにも思うけど。でも、こういう恋愛って冷めるの早いんですよね……いや、これはあくまで一般論ですが(笑)

 8/21 『創竜伝12 -竜王風雲録-』[田中芳樹/講談社ノベルス]

 創竜伝は、お父さん(私にこの人薦めた友人がこう呼んでいたのですが、気がついたら私にも移ってた)こと田中芳樹氏の抱える数多くの宿題の一つです。いやぁ……まさか今世紀中に新刊が読めるとは思ってなかったです、真剣な話(苦笑) この調子で、他の宿題にも取りかかって欲しいな。とりあえず、銀英外伝と七都市と……(以下、延々と続く)

 今回の話は9巻ラスト――天界での騒動で人界に落ちてしまった東海青竜王・敖広を探すために、西海白竜王・敖閏が宋代の中国に降りたった――の続きで、文句なしの外伝。竜王と悪神の対決が中心ですが、実際の歴史も少し絡めてあります。おそらく楽しんで書いただろうな、という内容。

 私この作品では、歴史上(割合としては、やはり中国史が多いか)のあまりメジャーでない事柄のエピソードもちょいと紹介されるのが密かに楽しみなんですよね。……で、そういう系統で、今回登場した中では趙普が興味深かったですね。時間が出来たら、史実ではどうなってるのか調べてみようかと思ってみたり。

 少し気になった点は、今回の話では四海竜王が主役になってるはずなのに、会話の雰囲気が竜堂兄弟のパーソナリティそのままだったこと。敖紹こと続さんは前からあのままだったからいいとしてあとの三人は少し……読んでいると、どうしても現代の服装をした四兄弟の姿が頭に浮かんでしまうんですけど……

 で、最後のほうで少し本編の続き。こっちになると相変わらずですね(笑)

 ……ところで、13巻は『21世紀初頭』と予告されていますが……来年……いやいや、せめて再来年だと思っていいですよね。まさか十年以上、待たせたりしないですよね(ありそうで怖い・泣笑) うぅ、なんかこの方の場合、素直に2001年と言ってるつもりなんだと、どうしても思えない(涙)

 8/24 『王女グリンダ』[茅田砂胡/中央公論新社・C☆NOVELS FANTASIA]

 今は無き大陸書房から出版されていた、『デルフィニア戦記』(中央公論新社刊・全18巻)の原型。加筆修正は全く無いそうですが、デル戦の存在を知ったのがつい最近で、大陸書房版を持ってない&原型がどんな話か興味もあったので、買ってみました。

 で、感想ですが、ほとんどデル戦ですね(当たり前) 細かいところで少し違った展開だったり、デル戦と同じ人物でも性格が異なってたりもしますが(ナジェックの馬鹿の設定は、こちらでも変わらないみたい……救いがたいヤツ) あぁ、サンセベリア(この作品ではグランディスだけど)のオルテス・ダルトンの主従にとってはこちらの作品の方がよかったでしょうね。出番多いし、オルテスの原型・カミールなんか、リィに婚約まで申し込んでるし(命知らずにも、というべきか) とにかく、大筋で同じとはいえ、デル戦とは違った展開ですから十分楽しめました。でも、リィの『女装』はあまりありがたみがなかったような……あれはなかなかしなかったからこそ、面白かったんだろうな。

 しかし、やはりいるはずの人がいないと言うのはちょっと違和感を感じますね。特にレティシアとヴァンツァーは好きなので(笑)

 8/26 『鵺姫真話』[岩本隆雄/ソノラマ文庫]

 この前復刊されたこの作者さんの作品。感想を聞くと、ほとんどの人が面白い、と言うので興味はあったのですが……如何せん題名……本当にあれだけはダメなんで、どうしても買えずに悔しい思いをしていたのですが、今度は新作、もちろん題名も違う!というわけで、飛びつきました。

 一言でいえば、『良作』でした。『キノ』が童話を思い出す話なら、これは小学生の頃によく読んだ、児童文学を思い出す話。

 どこかで悲劇が起こるのだろうかと、ドキドキしながら読みつづけ、行き着いた先はハッピーエンド。普通なら「ちょっとご都合主義だろ」と思いそうなものだけど、ちゃんとした展開の結果だったから、割とすんなり受け入れられました。こんなに素直に本読んだのって久しぶりな気が…だから連想したのかもしれませんね、児童文学を(もちろん、いい意味で言ってます)

 ……これ一作でも完結してるし、前作が未読でも全く差し支えはなかったけど……やはり、前作を読まないと、大体想像はつくけど、という描写がありましたねぇ……。私も、読みたいんだけどな(この話読んで、さらに読みたくなった) でも……う~ん。せめて題名が違ったら、立ち読みとか、手にとるぐらいはできるんだけど。前作は本屋さんで見かけても、いつも題名見た瞬間に完全に腰が引けちゃうからなぁ(溜息)

 8/29 『魔法戦士リウイ 6』[水野良/富士見ファンタジア文庫]

 未来の勇者・リウイの半人前時代の話第6弾。本屋に別の本が出ているかを見に行って発見、「……そういや発売だったな」と思い出した辺り、優先順位がかなり下がってきてます(苦笑)

 さて、今回は2度目のメリッサ編。メリッサの心境の変化がよくわかります……個人的には、なんか同意しかねるんだけど。ま、好みは人それぞれだし(……はっ。微妙に投げやりになってる!)

 今回の展開、長編の頃からメリッサは密かにリウイを想っている、という描写があったから、まだ耐えられた(そもそもミレルより彼女を応援してたし。私) しかしまさか、ジーニまでこうならんだろうな。最近はDM本誌は『風の大陸』以外読んでないからこの先の話、知らないんだけど。彼女にだけはリウイに恋愛感情(に近いものも)、持って欲しくないんだけどな……なんか不安だ。

 8/31 『野望円舞曲 1』[田中芳樹(原案)・荻野目悠樹/徳間デュアル文庫]

 人類が宇宙に進出した遠い未来、商業国家・オルヴィエーテを舞台に繰り広げられる、国家間の陰謀・人々の思惑を描く、スペースオペラ第1巻。

 こういうスケールの大きな話は田中氏の得意分野(完結している作品が少ない、という事実は横に置いておいて)ですし、荻野目さんは、架空歴史を構築した上で様々な人物を動かすことが上手な作家さんだと思っていますので、かなり期待して読みました。そして、期待を裏切らない面白さだったことに満足。強いていうなら、田中氏の作品を読んでるって印象が強くて、荻野目さんらしさをあまり感じられなかったのが少し残念でしたが……それなりに面白いからいいやって感じですね。……それに、荻野目さんカラーが出すぎだと、それはそれで問題だろうと思うし。ま、不幸な目に遭うのは別作品の主人公・グレイとギヴァに期待ってことで(笑)

 主人公のエレオノーラは田中のお父さんと荻野目さんのキャラにしては、適度に女性らしい感じがするのが○。今回はいまいち活躍しなかったけど、これは今後に期待ということで。ちなみに現在一番のお気に入りは、ジェラルド。……私にしては、普通の人を気に入ったな、と自分で思ってみたり。あ、もちろん喰えない親父殿も好きです(笑)

 結局のところ、よかったのかな?この2人の共著という形。なにしろ、田中氏の遅筆さは周知の事実ですし、荻野目さんはなんというか……いまいち一般受けし難い印象がありますので。互いに補いあえるということで……

 あとがきの言葉を借りれば、『設計』はお父さんでも『建築』は荻野目さんだから、そう続きを待たされることはあるまい、と信じます。…………というより、信じさせて欲しいな(泣笑)

 8/31 『ぼくらは虚空に夜を視る』[上遠野浩平/徳間デュアル文庫]

 普通の学生だった主人公・工藤兵吾が、ある日突然宇宙空間で未知の敵と戦うことになり――というのが大雑把なストーリー(本当に大雑把)

 面白かったです、うん。少なくとも私にとっては『冥王と獣のダンス』より数倍面白かった。……より正確には、ブギー以外の作品を初めて面白いと感じたかもしれない(^_^; なにせ、『殺竜事件』は期待しすぎたせいか拍子抜けしちゃったし(……というか、あれはミステリじゃないだろ……)『冥王と獣のダンス』は……どうも私の好みにはあわなくて。

 題名から『冥王と獣のダンス』でサラッと語られた<虚空牙>関連の話だろうとは予想していたけれど、そのとおりでした。でもそれだと話が成立するのかな、と思ってたのですが(『冥王と獣のダンス』では人類の一方的な敗北だったように書かれていましたし)ちゃんとまとまってたし、このあたりはさすがプロ、ということでしょうね。

 そういえば、<虚空牙>とブギーポップのあの人が繋がってたのは、さすがに予想外だったかなぁ。

 8/31 『銀河英雄伝説 黎明篇(上・下)』[田中芳樹/徳間デュアル文庫]

 ……悩んだあげく、結局買ってしまった……今後もこの形式で発売されるなら20冊にもなるのに……ま、いいか。多少本が増えたところで、部屋の状況は大して変わらん(半分諦め気分)

 とにかく、せっかく買ったんだからとまた読み返したんですが、いや~、やっぱりこの作品面白いですわ。物語の背景が綺麗に整っているのに加え、ラインハルトとヤン、それに他の登場人物たちもちゃんとキャラが立ってますからね。……ホント、みんな能力あるのに、これから容赦なく切り捨てていくんだよな。さすが、「皆殺しの田中」……まぁ、死人の出ない戦争なんてありえないと分かってるんですけど……

 しかしこの作品、名言(迷言も含む・笑)の宝庫ですよね。この巻では、ジェシカ・エドワーズの「あなたはいま、どこにいます?」からはじまる演説(全面的に賛同はしないけれど)と、フリードリヒ四世の「どうせ滅びるなら、せいぜい華麗に滅びるがよいのだ……」が特に好きな言葉。後者は、この人物の内面を勘ぐってしまうんですよ。もしかしてこの人は、ラインハルトや周囲が思っているよりも優れた資質を持っていたのでは、とか……

 そういえば、アッテンボローってまだ登場してなかったんですね。OVA見てるからか、最初からいたように錯覚してましたけど。帝国の主力では、ミュラーとケスラーが未登場か。早く登場して欲しいなー。

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