■ 2005.12月読書記録

 12/1 『風の王国 河辺情話』[毛利志生子/集英社コバルト文庫] →【bk1

 唐の公主として吐蕃(現・チベット)に嫁いだ少女・翠蘭と吐蕃王リジムの物語、第6巻。今回は番外編で、『女王の谷』のあとサマルカンドへと旅立った翠蘭の幼馴染・尉遅慧が、旅の途中立ち寄った町で巻き込まれた騒動の話。

 番外編もいいけど、やっぱり本編を進めて欲しかったよなーと思ったり思わなかったり。……いやだって、このシリーズどうやって完結するのかがこのところ一番の関心事なので。
 それはさておき読後一番に思ったことは、「何故そこで残らないんだ、慧!」でした。こういうのも悪くないけど、悪くないけど……(ぶつぶつ) あと、今回ゲストヒロインとなったウィシスは、苦境にめげず前向きに頑張る女の子で好印象でした。それだけに何故慧は残らないのかと(←しつこい)

 何はともあれ、普通に面白かったので満足でした。次巻は本編に戻るでしょうが、そちらがどういう展開になるのかも楽しみなところです。

 12/4 『沙漠の王 -金の髪のフェンリル-』[榎田尤利/講談社X文庫ホワイトハート] →【bk1

 「神話の子供たち」シリーズでも重要な役割を担っている青年フェンリル。彼を主役に、別の側面から歪な世界の姿が語られます。

 時代的には「神話の子供たち」より10年前。キナやトウマたちと一緒にレジスタンスとしてDエリアで活動していたフェンリルが、「沙漠の王」と「聖者」に出会い自分をコントロールする術を学ぶ、というのが大まかな展開。
 感想としては、可もなく不可もなく普通に面白かったいうところ。「黒の聖者」ナフスに心の闇を夢として突きつけられたり様々な事に思い悩みながら、ゆっくりとありのままの自分を認めて精神的に強くなっていくフェンリルがいい感じでした。それから、フェンリルの導き手で兄弟子となる「白の聖者」タウバ。思慮深くて頼りがいがあり、しかも茶目っ気もあるというなかなか素敵な御仁でした。「神話の子供たち」でも活躍してくれることを期待。あと、少しだけユージンも登場。相変わらずの残酷さを見せつけてくれました……。

 あとがきによれば、次巻もフェンリルとタウバが中心になる様子。今度はどんな話になるのか、楽しみなところです。

 12/8 『空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 9』[渡瀬草一郎/電撃文庫] →【bk1

 微量のSF要素を含んだ正統派異世界ファンタジー9巻目。今回は新展開前の小休止という印象が強かったですね。

 えーとまぁそのなんですか。事前に分かっていたあらすじから恋愛方面がメインに来るのかなー程度には思っておりましたが、ここまで華やかな事態になろうとはっ!(←おおげさ) ラトロアの工作員による襲撃など本筋で気になることも多々ありましたが、今回はやっぱり恋愛話に持っていかれた感があります(笑) その他重要な事としては、何度か仄めかされていたフェリオの出生に関する疑問や作中世界の謎の一端が明らかに。前者はこれで今後言及されなくなるのか微妙なところですが、後者はまだ新しい情報も出てきそうで、楽しみなところです。

 登場人物の話。フェリオとリセリナとウルク、この3人の関係に微妙な変化が生じて思わずニヤリ。リセリナもウルクも両方とも幸せになってほしいものですが、はてさてどうなりますか。クラウスとニナに関しては、ベルナルフォン、よくやった!という感じでした。ブラドーとソフィアはもう少し時間がかかるかと思っていただけに、思いがけず早くくっついたのでちょっと吃驚。あと、カシナートさんが実は神姫と相思相愛だったらしいことにも吃驚しました。いや、なんとなく片思いというか告白はしてない状態かと思ってたので。
 恋愛絡みから離れたところでは、今回はダントツにバロッサ将軍が素敵でした。あと、仮面の人はもしかしたらパンプキンだったりしないかと淡い期待を抱いていたのですが、流石にそれはなかったです。嗚呼残念。で、新登場となった仮面の人ことメビウス。かなりの性格破綻者のようですが、彼の素顔が意味するものは何なのか。ラトロア元首のジェラルド氏の目論見とあわせて、今後どういうふうに物語に関わってくるのか気になるところ。
 ……そういえば。某人にこっそり死亡フラグが立ってしまったような気がするのですが、思い過ごしだといいな。つーかここまで来たら生き別れフラグでも嫌だなぁ、と思ったり思わなかったり。

 どーでもいい独り言。ラトロアの民芸品、ちょっと欲しいかも。

 12/9 『がるぐる!(上) Dancing Beast Night』[成田良悟/電撃文庫] →【bk1

 無法都市と化した人工島を舞台に繰り広げられる「越佐大橋」シリーズ完結編の前編。

 今回は舞台に役者が揃ったところで幕引きになってしまったことも手伝い見事なまでに予告編という感じのため、どうにも感想が書きにくいですね(汗) とりあえず、最後の「島」に戻った狗と戌の再会場面が格好良くてお気に入り。あとは、八雲の変人(というか異常者というかもういっそ狂人というか)ぶりやイーリーの真意、それから結局「バネ足ジョップリン」は何者なんだろうとか、そのあたりが気になったぐらいかな。

 ともあれ、この状態から下巻ではどんな大騒動が起こるのか。そして各登場人物たちにどんな結末が用意されているのか。次回予告に否応なく期待を煽られてしまいますね。

 12/10 『死が二人を分かつまで 2』[前田栄/新書館ウィングス文庫] →【bk1

 先月の1巻に続いて発売のノイエ・ヴァンピリズム、第2巻。今回は全編書き下ろしです。

 さて、「音匣迷宮」と題された今回の話。子爵邸で起こった昏睡事件の解決を依頼されたJ.C.が、元凶らしきオルゴールを調査中自身も暗示にかかり昏睡状態となってしまう。ミカエラはJ.C.を助けるため夢の中に潜入し、J.C.の過去を垣間見ることに……という展開。J.C.が歩んできた過程が分かった事も興味深かったですが、それよりもミカエラの精神的な逞しさと強さが印象的。とりあえず、p.208のワルトミア男爵夫人の感想には全面的に賛成です。つーか、さすがにそれが目的だとは思ってなかったよ(笑) しかし、事件が一件落着して終わるのかと思いきや、最後は思いがけない展開に。何故こういうことになったのか、おそらく3巻で明らかにされるのでしょうが……。
 4ページほどのおまけ掌編「彼の事情・ウォルフ篇」は、ウォルフがかわいすぎでした。頑張れウォルフ、そのうちいいことも(多分)あるさ、と声をかけてあげたくなるぐらいに(笑)

 あとがきによれば3巻は少し間が開くとのことですが。かなり気になるところで終わっているので、出来るだけ早く続きが読めれば嬉しいなぁ。

 12/11 『GOSICK V -ゴシック・ベルゼブブの頭蓋-』[桜庭一樹/富士見ミステリー文庫] →【bk1

 西欧の小国に留学した少年と留学先の学園に住む奇妙な少女の交流と彼らの遭遇する事件を描いたシリーズ、本編第5巻。

 ある目的のために修道院に移送されてしまったヴィクトリカ。しょげかえる一弥は、ひょんなことから彼女を迎えに行くことになる。「ベルゼブブの頭蓋」という不気味な二つ名を持つ修道院で無事再会した二人だが、そこで事件が発生して――と、そんな展開。
 口絵からしてloveだねぇ、とニヤニヤしながら読んでました。アブリルに割り込む余地が全くなさそうなのが少し気の毒な気もしますが。それ以外では……ミステリとしてアレなのはいつものことなので置いといて(酷)、思いがけずヴィクトリカの母親(容姿が想像していたものと全く違ってちと吃驚)と父親が登場したり「次の嵐」に関することがあれこれ出てきたりと、段々シリーズの核心部分が露出してきたのかな、という印象でした。あと、ますます変な髪形になってしまったグレヴィール警部に思わず涙。嗚呼、せっかくの美形なのに……。

 さて。修道院で起きた事件の種明かしは為されたものの、学園へ帰るために乗った列車で新たな事件が、というところで幕引きに。一体何があったのか、気になるところです。

 12/12 『シナオシ』[田代裕彦/富士見ミステリー文庫] →【bk1

「寿命が残っていた」ことと「ある事情」から別人として生き返ることになった「僕」は、「私」として生活するうちに「僕」だった頃の記憶をほとんど失ってしまっていた。そんな私の前に死後の世界で相対した「案内人」が現れ、私は私の真の目的を思い出す。すなわち、かつて「僕」が犯した犯罪を阻止するため、時を遡って為直す者――「シナオシ」となったことを。

 2月に発売された『キリサキ』の続編……ではないと作者があとがきで力説していますけど、とりあえず同一設定を使用しているのは間違いないので同一シリーズではあると思っていいのではなかろうかと。

 細かい事はさておいて。読了後に真っ先に抱いた感想は、「ややっこしいわーっ!(ちゃぶ台返し)」ですね(苦笑) 『キリサキ』で使われたトリック(?)を知っていることに加えてカバー折り返しのあらすじに書いてあった言葉から、おおよその真相は割と早めに気がつきましたが、それでも途中で「これがあーなってそーなって……?」と混乱してしまったし。ですがまぁ、内容そのものは今作もなかなか面白かったので満足です。

 このシリーズ(?)はまだ続くのか、続くとしたら今後もこういう方向性で行くのかどうか。ちょっと楽しみですね。

 12/13 『ニライカナイをさがして』[葉山透/富士見ミステリー文庫] →【bk1

 富士ミスで「ルーク&レイリア」、電撃で「9S」シリーズを発表されている葉山さんの読みきり作品。ちなみに、ミステリ要素はひとっかけらもありませんでした(笑)

 偶然出会い、お互い事情と秘密を抱えたままで沖縄に向かったリカとタクローの、謎も何もない直球勝負の青春ラブストーリィ。終盤やや驚きの設定開示が待っていたりしますが、全体としては普通に良作のボーイ・ミーツ・ガールという感じでした。あらすじ読んだ時点では「ベタというか、あざとい感じ?」と思っていたリカが、実際に読んでみるとなかなかかわいい女の子だったのも効いてますね。

 作品に関係のない独り言。最後の著者紹介の部分が、微妙に涙を誘います……本当にこういうところは厳しいですよね、出版業界。

 12/14 『邪眼』[藤原京/集英社スーパーファンタジー文庫]

ぼく、長尾圭は21歳の大学3年だが、契約している「相棒」のおかげで別の顔も持っている。ぼくたちの仕事をなんと呼ぶかは難しいところだ。退魔師、拝み屋、悪魔祓い。いろいろあるが、どれも今ひとつぴたりとこない。べつに魔物を退治するのが仕事ではないし、護摩を焚いて呪文を唱えて祈るわけではないし、ましてや聖書と聖水で悪魔を追い払うわけではない。悪魔にとり憑かれているのは、逆にぼくたちのほうだろう。要は、そういうことにすぎないのだ――。

 来年の新作発売(予定)を勝手に祝し、布教も兼ねてとりあえず一番好きな氏のシリーズ(といってもシリーズは2つしかないわけですが)の紹介をしてみる。絶版&レーベル消滅してても気にしない気にしないー。

 さて、まずはこのシリーズの基本パターンの解説。主人公の長尾が契約している「相棒」は、邪眼の悪魔ヴォラク。透視系以外に特筆する能力はないものの、悪魔の痕跡を見分けることができ、嫌らしく隠されたものを嫌らしく暴き出すことにかけては右に出るものはないという悪魔。長尾はこの相棒の透視能力を一部使うことができ、時折持ちこまれる依頼を自分と同じく悪魔と契約・その能力を行使できる連中とこなしていく、というもの。今回の話は、呪いによってヒキガエル化しつつある人物の救命依頼。相手側に隠身系の能力を持っている悪魔がいるため、ヴォラクを相棒とする長尾にお呼びがかかったことから始まります。
 持ちこまれた依頼の背景について、長尾たちはいろいろ想像を巡らすものの必要以上に踏みこんだりはしません。仕事で組むことが多い長尾と黒沼(ちなみに彼は、直接戦闘系としては最強といっても過言ではない「西の魔王」ペイモンの契約者)の関係にしても、互いに不得手な部分を補うために行動を共にしている程度の仲で、長尾は黒沼の本当の職業や年齢はおろかフルネームも知らないしあまり興味も持ってない。「相棒」である悪魔にしても助力を期待するだけ無駄で、悪魔によっては油断すると文字通り咬みついてくることすらある始末(つーか、そもそもコミュニケーションがちゃんと成立しているのかすらも疑問) そんなこんなで、全体に漂うドライというかビジネスライクというか殺伐とした雰囲気が、なんとも言えない独特の魅力になっています。
 あと、シリーズが進むにつれてミステリ方向に進むのですが、1作目のこの話ではそっち系要素はあまり。ただ、相手側の戦力や動きを読んでの駆け引き・頭脳戦はこの巻の時点で十分面白いと思います。

 クセは強いけれどかなり好きな作品なので、新作が売れたらこれの復刊とか続編とかないかな、と密かに期待していたする……。

 12/15 『呪願』[藤原京/集英社スーパーファンタジー文庫]

 「邪眼」シリーズ(本当はシリーズ名がないのだけど、便宜上こう呼ぶ)2冊目。今回は、留守にした数分間に部屋を無茶苦茶に荒らされ、さらに「24時間後に、降伏か、死を選べ」という簡潔な脅迫状を受け取ったフリーライターが依頼主。脅迫相手の相棒は、漆黒の牝狼マルコキアス。契約者の手足となる事も厭わない忠実にして誠実な下僕、接近はそれだけで死を意味する火炎系の悪魔。さらにもう一人相棒持ちがいるようだが、そちらはまだ姿を見せていない。一連の流れに引っかかるものを覚えた長尾は、自分の分の仕事が終わったあとも黒沼に付き合うことにする、という展開。

 1巻と同じくこの巻でも、黒沼・長尾コンビと相手側の手の内の探りあいや駆け引きが面白いです。相手の相棒を探り彼我の実力差を理解するのは基本。勝ち残るためには相手の行動を読んで幾重にも策や罠を仕掛け、状況が不利になってなお生き残りたければさっさと勝負から降りる。それを弁えず考えなしに動いた場合は情け容赦も無く痛いしっぺ返しが待っている、というシビアなルールが徹底しているのが良い。そして、そのルールに則ってああいう結末にするあたりが、このシリーズの皮肉ぶりや底意地の悪さを象徴してるよなーとつくづく思う今日この頃。……しかし彼は、保険をかけたつもりだったとしてもよくああいうことをしようと思ったものだ、とある意味感心しますよ。冷静に考えなくても、明らかに危ないだろうに……。

 独り言。本編に関係のない雑談として、陰陽師関係の話題が少しだけ書かれてましたが、来年の新作ってあのノリで行くんですかね。

 12/16 『兇刃』[藤原京/集英社スーパーファンタジー文庫]

 「邪眼」シリーズ3冊目は、『呪願』で知り合ったマルコキアスの相棒・岬から、バレンタインデーの深夜に掛かってきた電話で始まります。長尾が連れて行かれた先で待っていたのは、血まみれの女性の骸。岬の友人だという彼女は、このところ世間を騒がせている強姦殺人犯に襲われたらしい。それだけなら警察に任せるべき事件になるが、殺された彼女も相棒持ちで、しかも能力は攻撃PK系となれば話が変わってくる。普通の人間が彼女を殺せるわけがなく、必然的に犯人も相棒持ちということになるからだ。そして長尾は、姿の見えない犯人を追う岬に手を貸すことに――というのが大まかなあらすじ。

 この巻から、ミステリ色が強くなります。通常のミステリと違うのは、やはり悪魔の存在が重要な鍵となっているところ。悪魔とひとことで言ってもその能力は千差万別。相棒となった人間が振るう力も当然それに倣うわけで。今回の事件だと、犯人の侵入経路やどこで被害者に目をつけたのか、といったことが相棒から借りている能力と密接に繋がっています。
 現場に悪魔の痕跡が残されていないため、長尾の透視で犯人の相棒を見破ることはできない。同じく犯人探しに協力している千秋の過去視では犯行状況は分かるものの、犯人の相棒に隠身系の能力があるらしくその姿が見えない。もとより攻撃系オンリーの岬ちゃんは、情報収集段階ではあまり出来ることがない。この状況から、長尾が頭脳労働担当として偶然・必然で得た情報をあれこれつき合わせ、犯人に迫っていく過程が見物。そして、最後は彼女が持っていくのはある意味このシリーズのお約束ということで……。

 12/17 『骨喰島』[藤原京/集英社スーパーファンタジー文庫]

会社の金庫に入れられた、五月の連休中に必ず社長を殺すと書かれた脅迫状。女性秘書から護衛依頼を受けた黒沼と長尾は、社長個人が所有する小島へと向かう。その島に集まったのは、社長とその女性秘書、護衛に集められた「相棒持ち」が長尾たちを含めて4組、さらに何故か呼び出されてきた社長の親族たちの総勢16人。連休が始まるやいなや、警戒をすりぬけて社長が襲われたのをはじまりに、一人、また一人と関係者が殺されていくことに――。

 シリーズ最高傑作とする人も多い、「邪眼」シリーズ4冊目。この巻は、敵の悪魔の結界で脱出不可能となってしまった島を舞台にしたクローズドサークルものになっています。殺人を実行している悪魔はおなじみ隠身系能力を備えていて、気配を感じたり痕跡を見つけることが出来るのは集まった相棒持ちの中でも長尾一人。その長尾でも、結界に遮られてヴォラクを呼び出せず、悪魔の特定にまでは至らない。誰が敵なのか疑心暗鬼が募る中で、生き残るために長尾は犯人とその相棒の正体を必死で推理する、という展開。
 下手に書くとネタバレになりそうなので詳細な感想は省きますが、悪魔の能力をフルに利用した犯行はなかなか凝っていて読み甲斐があります。つーか、トリックが分かっていてもたまに読み直すとちょっと混乱したりするし(←駄目駄目)

 どーでもいい独り言。既に達観はしてるとはいえ、Loveが売り文句の某レーベルでも、たまにはレーベル名に倣ってこれぐらい凝った作品発売されたらなぁ、と時々思わなくもない。

 12/22 『霊視』[藤原京/集英社スーパーファンタジー文庫]

 「邪眼」シリーズ5冊目にして、おそらく完結巻。この話はこれまでと趣が異なっていて、長尾が街中で偶然出会った高校生ぐらいの少女・夏美との交流とその関係の行方がメイン。

 この夏美という少女、自分が「幽霊だ」主張し、事実長尾以外には姿が見えていない。大学4年になり、将来のことをそれなりに悩んでいる長尾は、自由な彼女に幻惑されるように関わっていくことに。これだけだとロマンスっぽい話ですが、それで終わってくれないのがある意味このシリーズらしいところ。中盤で起こったある事件を追っていつものように相棒推理を始めた長尾は、真実とともに自分の業をつきつけられることになってしまうという……。最後に長尾の側をマルコが歩いているというのはつまり、そういう結果だったのだろうし……なんとも後味が悪い終幕です。

 この一件で凹みまくった長尾に、次の巻で少しぐらい救済措置があるだろう、あったらいいな、と思い続けて早数年。流石にこのシリーズの続編に関しては諦め気味ですが、それはそれとして来年早々に新作が読めるのは素直に嬉しいですね。……最近の流行っぽくない、これとか「黄昏狼」並みにダークな話だったらもっと嬉しいなぁ。

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