■ 2005.11月読書記録

 11/1 『流血女神伝 喪の女王2』[須賀しのぶ/集英社コバルト文庫] →【bk1

 架空歴史ファンタジー「流血女神伝」、最終章ユリ・スカナ編第2巻。今回は衰退する一方のルトヴィア、バランスが崩れだしたユリ・スカナの国内事情、それぞれの立場で暗躍・対立・そして苦悩する人々の姿が描写されています。

 とりあえず「ネフィシカ怖っ!」が読後真っ先に思い浮かんだ感想でした。……いや、やはり最後の母親に牙を剥いた瞬間が強烈で……こういう人は敵に回すな、というタイプの典型ですね彼女は。これだけで彼女の復讐劇が終わりとは思えませんし、なかなか曲者な彼女の夫共々今後の動向が気になるところ。あと、このままではグラーシカがかわいそうすぎるので何とかしてあげてくださいと言いたくなりました(涙) このままカリエが以前に見た白昼夢に繋がっていったらもう目も当てられないし……つーか、父上やミュカにあれだけ指摘されてもやっぱり彼女への対処があまり変わってなさそうなドーンに段々腹が立ってきたのですが。
 エティカヤは、今回ほぼ完全に沈黙を保ったまま。この静かさが逆に恐ろしい……。
 カリエ一行は、比較的蚊帳の外という感じで平穏無事に過ごせていましたが。所在こそつかまれていないにしてもユリ・スカナの一派に目をつけられていたり、知らぬこととはいえ渦中の人たちと行動を共にしている以上、この先また波乱に巻き込まれていくことは確実でしょう。……もしも、ネフィシカがまだ彼に心を残していたら、そして今後ラクリゼが復活して合流することになったら、一体どんな事態になるでしょうね(震)

 次巻は来年2月予定とのこと。今後、この世界がどのような動きを見せるのか。カリエの第2子は本当にサルベーンが想像したような存在なのか。色々と気になることが多すぎて、たった3ヶ月が非常に待ち遠しいです。

 11/2 『スカーレット・クロス 月波の導べ』[瑞山いつき/角川ビーンズ文庫] →【bk1

 不良神父とその『聖なる下僕』となった吸血鬼の少女の物語、スカーレット・クロス7巻目。伝説の『聖櫃』を開ける『鍵』に選ばれたツキシロ。イブリスの契約者たちは彼女を確保するために動き出す――と、そんな展開。

 急展開というほどではないけれど、じわじわと事態は進行中、みたいな巻でした。とりあえず、最後のオウカさんの決断がただただ重かったですね。ギブやツキシロも作中で散々苦悩したりしてたのに、あれで全部持っていかれた感すらあるし(苦笑) 彼女の決断が、若者たちの未来を照らす道標になってくれれば良いのですが……。

 このペースだと、あと2巻ぐらいで決着かな? まぁとにかく、どんな結末が用意されているのか、楽しみなところです。

 11/3 『ガイユの書 薔薇の灰に祈りを』[響野夏菜/集英社コバルト文庫] →【bk1

行き倒れていたところを、小さな町で旅宿を営む夫婦に助けられた少女ポーシア。夫婦に引き取られ平穏な暮らしを手に入れたかのように見えたポーシアだったが、ある出来事をきっかけに彼女の秘密が暴かれてしまう。

 コバルトで活躍されている作家さんの新シリーズで、7年ぶりの異世界ファンタジー。なんとなく気になったので購入してみました。

 今巻は設定説明を兼ねた序章、という印象ですね。魔術主が生み出した不死の存在「灰かぶり」の実像と一般認識の乖離が生み出す悲劇や望んで死が得られない「灰かぶり」たちの切ない想いが、なんとも物悲しい雰囲気を生み出しています。

 事件を経て否応なく旅立つことになったポーシアですが、彼女の旅の先には何があるのか。ポーシアと瓜二つの容貌を持つ女性、そしてそれぞれの事情で女性を追う二人の男性との関係はどうなるのか。先の展開がなかなか楽しみなシリーズです。

 11/10 『死が二人を分かつまで 1』[前田栄/新書館ウィングス文庫] →【bk1

 前田栄さんの新作は吸血鬼モノ。小説Wings連載分と書下ろし中編を収録しての発売です。どうでもいい話ですが、コミック版の連載を何度か読んでいたので、「あれ、主役違うの?」と少し戸惑いました(主役交代の事情はあとがきで明らかにされてます)

 それはさておき感想。雑誌連載分の「劇場の吸血姫」は主役二人の出会い&関係人物紹介編。これを読んだ限りでは可もなく不可もなく、普通に面白かったという感じ。まだ伏せられている事も多いし、今後の展開は気になります。
 一方、書下ろし中編「彼女の事情・ミカエラ篇」は、ミカエラがJ.C.と別れたあとどういう経緯であの館で働く事になったのか、その詳しい裏事情が語られています。「劇場の吸血姫」のシリアス&緊迫した雰囲気とは異なり、基本コメディ調で話が進みます。冷静に読めばそれほどおかしくないかもしれませんが、それまでとのギャップも手伝って始終笑いながら読んでました。なんと言うか、たくましいなぁ、ミカエラ。

 来月に早速2巻が発売されるようで。J.C.とミカエラの活躍は勿論、カールとエリオットも絡んでくるのかなどいろいろと楽しみなところ。……ヘンリーの言からすればかなり重い展開になりそうな気もするけど、意外とそういう展開にならなさそうな気もするしなぁ……。

 再びどうでもいい話。数いる登場人物の中でよりにもよってヘンリーが一番のお気に入りキャラになるあたり、私の趣味の悪さは相当だと改めて自覚した今日この頃。

 11/11 『Hyper hybrid organization 00-03 組織誕生』[高畑京一郎/電撃文庫] →【bk1

 特撮ヒーローモノをベースに展開している「H2O」シリーズ外伝、最終巻。どうでもいいけど、「萌え0%」という帯の売り文句はどうなんでしょうか。

 今回は前巻までの流れを踏まえて、佐々木と藤岡の決別、新組織結成前から行われる駆け引き、そして心ならずも巻き込まれてしまった女医・村上の決断が描かれています。最初からある程度のゴールは見えていたわけで、そういう意味では意外性はさほどなく結局納まるところに納まったという感じですが、そこに行き着くまでの過程はやはり面白く、一息に読みきってしまいました。もう少し詳しい描写が欲しいなぁと思う場面が、しばしば(私の主観では)あっさり流されてしまっていたのが少し残念でしたが、まぁこれは好みの問題ですね。
 あと、本編で名前も出ていない人も何人か登場していますが、彼らが本編の段階でどのような立場にいるのか、そしてどのように話に関わってくるのかも気になるところ。博士とかどうしてるんだろう。

 さて。あとがきに作者氏の中で組まれている予定が書かれておりましたが……正直、1年以内に本編1冊でも発売されればいいほうだろうと思わなくもない。

 11/12 『タクティカル・ジャッジメント8 自業自得のクリスマス!』[師走トオル/富士見ミステリー文庫] →【bk1

 司法改革で陪審制等の諸制度が導入された近未来の日本で、性悪弁護士が違法スレスレ、むしろ違法だろうというような手段を駆使して無罪をもぎ取る法廷劇第8巻。

 前の巻で「山鹿最大の危機」と宣伝されていたこの8巻。まぁ確かに危機ではあるけれど、全くもって自業自得としか言いようがないので同情ができようはずもない(苦笑) 最後だけは流石に気の毒になりましたが。皐月やりすぎ。あれは待ちぼうけになる相手も気の毒だと思うぞ。……しかし今更な疑問ですが、雪奈ってそんなに良い娘さんなのですかねぇ?

 さて、次巻でも山鹿はピンチに陥るようですが、山鹿のことだから口八丁手八丁で切り抜けるんだろうなぁと適当に思いつつ、次巻を楽しみに待ちたいと思います。

 11/19 『BLACK BLOOD BROTHERS 4 -ブラック・ブラッド・ブラザーズ 倫敦舞曲-』[あざの耕平/富士見ファンタジア文庫] →【bk1

 吸血鬼と人間の共存地帯『特区』を舞台にした吸血鬼と人間たちの物語、「BBB」シリーズ長編第4巻。

 今回はロンドンを舞台にした過去編で、大日本帝国海軍少尉としてロンドンに留学していた望月次郎青年が、「賢者イヴ」ことアリスとの出会いを経て、吸血鬼・望月ジローになるまでの物語。あとがきによれば「新章開始前のインターバル」なのですが、それでもしっかり面白かったです。事件そのものは現在の『九龍の血統』の絡みのそれほど大規模なものではないけれど、進む道を迷っていた次郎が最終的にアリスを守る事を選び戦場に赴く場面は問答無用で燃えました。

 登場人物の話。これでアリスがどんな人だったのか明らかになったわけですが。「賢者イヴ」は何度転生しても天然気質なのは変わらないのか、それともたまたま二代続けてそうなっただけなのか、どうでもいいことが気になってしまったり(笑) それからカーサ姐さんがアリスに無自覚とはいえ依存していたというのがちょっと意外でした。ジローにはこの先付き合っていく中で段々執着するようになったのでしょうけど、このあたりの愛憎交じりの複雑な感情や生まれの特殊性からくる孤独感に後押しされて彼女は香港で『九龍の血統』に加わることを選んだのでしょうか……。あと、ゲスト出演の秋山参謀(この話の時点ではまだ参謀じゃないけど)と次郎のやりとりも良かったですね。互いに握手しようとする場面と最後の「行け!」はもう最高。

 おそらく今後への伏線と思われるようなこともあれこれと仄めかされ、本編がこの先どういう展開になるのかますます気になるところです。

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