■ 2004.5月読書記録

 5/1 『そのとき鋼は砕かれた』[高殿円/角川ビーンズ文庫] →【bk1

 「そのとき」シリーズ2巻目。フランと愉快な仲間たちは異種族・カリス族の国エシェロンへ足を踏み入れます。

 感想。1巻はなんとなくギャグとシリアスのバランスが悪いような気がしなくもなかったのですが、今回は多少の引っかかりはあるものの割と普通に読めました。慣れただけかもしれないけれど。つーか私、個人的にこの人の作品ギャグは余分と思うんですよねぇ。なんか、無理に笑わせようとしてる感じで。自然に、ちょっとした描写で笑わせてくれる程度で十分だと思うのですが……ま、これは好みの問題でしょうね。

 登場人物のこと。フランのライバル(?)であるパルメニアの「隻眼王」ミルドレッドの腹心2人が登場。エルゼリオ(意外と常識人)は雑誌短編で一足先に登場していましたが、今回はラウドミア=ロゼッティが登場。この人はこういう方向性で狂気に蝕まれた人なのか……なんというか、(嫌な)バラエティに富んでる一族ですねぇ、ロゼッティって……。それから、エシェロンのセルマゲイラ女皇と後継者のオシリス。彼らはもう登場しないのでしょうか。特にオシリスは結構好感を持ったので、できればまた登場して欲しいのですが……はてさて。

 ともあれ、作者発言によると前半戦の主要キャラはこれでほぼ出揃ったとのことなので、次巻以降の展開に期待。「共和制エドリア」が崩壊する際、フランたちがどんな立場でどんな役割を担うのか、楽しみなところ。

 ……そういえばエシェロンとエドリアって、「遠征王」とか「マグダミリア」の時代ではどうなってるんだったっけ? エドリアは……確かマグダで登場した商人がエドリア人だった気がするんだけど。(追記。気になったので調べてみた。エドリアは体制はともかく存続してますね。エシェロンは、「遠征王」時点でサファロニアが独立したのか? 領土がかなり減少。「マグダミリア」の時代にはどうやら滅亡してしまっているようです。……となると、カリス族はどうなったのか。うーむ、気になる。本文のどっかに書いてあったっけ?)

 5/2 『息子はマのつく自由業!?』[喬林知/角川ビーンズ文庫] →【bk1

 「まるマ」シリーズ番外編2冊目。今回は異世界に飛ばず、地球の渋谷一家をメインにした短編3本が収録。ちなみに、有利誕生前&赤ん坊の頃の話は雑誌掲載時に読んでいたので、初読は有利と兄・勝利の子供の頃のエピソードだけでした。

 感想。えーと、雑誌掲載分の2話は渋谷ママが最強だなぁと(笑) あと、1話目の次男の変化(やさぐれ→さわやか)は、一体途中経過に何があったんだろうなぁと気になりました。
 勝利兄の話は……ああ兄ちゃん思いっきりブラコンなんだねーと、そんな感じの感想しか思いつかない自分が嫌だ(笑) しかし、何気にあの人と出会って、後継者指名されてたりする勝利兄。渋谷さん兄弟、そろって大物の割にちっともそう見えないのは結構すごい……のかも?

 ともあれ、このところ多少シリアスに傾いた展開が続いている本編とは違って番外編、しかもあちらの話がほとんど関係ない地球の話ということも手伝ってか、かなりお馬鹿な(褒め言葉)な内容で楽しかったです。

 5/4 『ディバイデッド・フロント II.僕らが戦う、その理由』[高瀬彼方/角川スニーカー文庫] →【bk1

 憑魔と呼ばれる謎の生命体が人類を脅かすようになった地球で、共生型の憑魔に寄生されたために否応無く隔離戦区で「負けるのも勝つのも許されない」戦いを強いられることになった少年少女たちの物語、第2巻。

 前半は割とほのぼの。トノサマヒヨコがとってもぷりてぃ……なんて趣味に走りまくった感想は横において。1巻の事件の後、ちょっとだけ前向きになった香奈ちゃんの姿に自然とエールを送りたくなります。で、微妙な三角関係については……彩の言い分もわかるんですけれどね。一流さんの言い分も分からなくもないしなぁ。心情的には微妙なところだったり。勿論、英次と香奈ちゃんはお似合いだと思ってますけどね(思いっきり私見)
 一方後半の憑魔との戦闘展開はやはりというか結構キツイものが。「芹沢隊長」に敬礼する桐島さんのところで、ちょっとぐっときて。あの人たちの別れの場面でやりきれない気持ちになって。最後の香奈ちゃんの一言で止めを刺された心境。この結末が、彼らにどんな影響を与えてしまうのか。考えるのもまたキツイですよねー……。でもとにかく、生駒隊長が格好良かったです。いっそ、哀しくなるほどに。彼の銃を受け取った英次も、彼なりに強くて格好良い男になって欲しいと、心から思います。

 で、今回登場した新型憑魔、通称レッドキャップ。コイツ(ら?)が最大の敵、になるんですかね。高度な知性と憑魔の能力を兼ね備えたこの敵に、隔離戦区の人々はどのような戦いを挑むのか。また、レッドキャップと英次の変形した右腕の奇妙な類似は一体どういうことなのか。なんとも先が気になるところです。

 5/8 『GOSICK II -ゴシック・その罪は名もなき-』[桜庭一樹/富士見ミステリー文庫] →【bk1

 西欧の小国に留学した少年と留学先の学園に住む奇妙な少女の交流と、彼らの遭遇する事件を描いたシリーズ、第2巻。

 今回は、現在行方不明になっているヴィクトリカの母親に掛けられた冤罪を晴らすために、その故郷に赴いたヴィクトリカと一弥。中世さながらの暮らしを営むその村で、殺人事件が起こり――というもの。トリック自体はどっちかというと基本的な部類になるかな。結構すぐに見当がつきます。ですがまぁ、そっちはおまけみたいなものだから(暴論)、この際横に置いておいて。

 ヴィクトリカと一弥のカップルが、前にも増して微笑ましかったです。些細なことで喧嘩したり、それでも相手が大事で自分が守ろうとしているところなんか可愛らしくて可愛らしくて。それだけに、あの予言が……作品の時代的にも、そういう風になるのは分かるんですけれどね。「心は離れまい」という一節が救いになるのか否か。今後の展開に注目。

 それにしても、ヴィクトリカと一弥の絆がなんだかんだで強固なだけに、一弥に気がある様子の同級生・アブリル嬢はなんだか気の毒になったりならなかったり。

 5/9 『空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 3』[渡瀬草一郎/電撃文庫] →【bk1

 SF要素が加わった異世界ファンタジー、第3巻。前巻から引き続いて、主にアルセイフ王国での政変に絡んだ諸々の動きの中、2巻の時点でもかなり多かった登場人物がまた増加。情勢もさらに混沌として、ますます目が離せなくなって、ますます面白くなってきた印象です。

 登場人物の話。正統派主人公のフェリオは、やはり普通に格好良いですね。本人は嫌がりそうだけれど、意外とこういう状況に向いているように感じられます。そして、どうやら彼も血筋に何かありそうで……勿論そのうち明らかになるのでしょうが、はてさて。それから、彼と行動をともにしているウルク。2巻での行動が半ば無自覚だったのはちょっと驚きだったり。てっきり、自覚してると思ってた……。それはさておくとしても、彼女の所属するウィータ神殿がそういう態度に出るならば、彼女の今後が気になるところ。恋敵になりそうなリセリナも合流しちゃったしねぇ(笑)
 一方、当面の敵である陣営は、というと。レージクの複雑な人格の一端や、最愛の義妹ニナを喪って荒むばかりのクラウスの姿などが垣間見えることで、彼らに同調はできないものの、そこに至ることに納得はできるという心境になります。タートムの女間者とシルヴァーナの因縁や、彼らのもとに拘留あるいは軟禁されている人々の今後の出方や……とにかく、いろいろ気になることが多すぎて嬉しい悲鳴をあげてしまいそう。

 さて。4巻は8月ぐらいでしょうか。フェリオたちは多少戦力が増えたとはいえ、やはり不利には変わりなく。どうやら神殿の助力も願えそうにない今の状況をどう乗り切っていくのか。両陣営の衝突があるのか。それとも、もう少し水面下での駆け引きが続くのか。諸外国もさらなる介入をはじめるのか。リセリナを追うイリスたちは、どう出るのか。どちらにしても、今から次の展開が待ち遠しくてしょうがないです。

 独り言。どーでもいいけど、新登場人物の一人、ベルナルフォンのイラスト見た瞬間、某RPGの某真の雷の紋章継承者を思い出したのは絶対に私だけではないはずだ……。

 5/10 『ヴぁんぷ!』[成田良悟/電撃文庫] →【bk1

【親愛なる日本の紳士淑女諸君! 月並な問い事で申し訳ないが――諸君は吸血鬼の存在を信じるかね?】【――失敬、名乗るのが遅れたようだ。我が名はゲルハルト・フォン・バルシュタイン! このグローワース島を預かる、子爵の称号を賜りし吸血鬼! 自己紹介代わりに、我が島で起こった一つの騒動について話をしようではないか! ……まあ語らせてくれたまえ。暇なのだ】【君が私の話を信じるも信じぬも、私が人にあらざる存在という事は一目瞭然であろう? 何しろ私は――】

 2ヶ月連続の成田氏の新作。今回は、一風変わった吸血鬼たちの饗宴。

 今回の話も、それぞれの事情を持つ連中がそれぞれの思惑で行動し、いつのまにやら一つの物語を作り上げていく、というもはや成田氏の芸風となったパターン。個人的には『デュラララ!!』ほどツボにはまらなかったけれど、それでも充分面白かったです。子爵もなかなか良いキャラでしたが、市長も負けず劣らず。なんというか、小悪党の鑑って感じが○。

 独り言。えーと、ヴァルの正体って……作中のヒントからして、やっぱりこれですよねぇ。そんなに恥ずかしがらなくても、普通にかわいいと思うけどなぁ。それにこのタイプの吸血鬼って転がるぐらいで実害ないって話じゃなかったっけか(←それ、吸血鬼……?)

 5/11 『アリソンIII <下> 陰謀という名の列車』[時雨沢恵一/電撃文庫] →【bk1

 幼馴染の少年少女と英雄さん&王女様が繰り広げるほのぼの(?)冒険物語『アリソン』、完結編下巻。

 内容は主に2パートで、前半は上巻から引き続いて列車で起こった事件の経過と顛末、そして全体の謎解きが後半という感じ。で、謎解きに関しては割と予想通りというところ。とはいえ、どっちかと言えば感覚的に目星をつけてた感じなので、「あー、それも伏線でしたか」といちいち納得しながら読み進めたり。あ、謎解きの舞台になった教会でのカップル成立場面には内心で思わず拍手。お幸せにーと思いつつ……確かに、一組は幸せに暮らしてるっぽいですが……まぁ、幸せの価値観はそれぞれだろうけれど……(なんとなく釈然としない表情)

 エピローグの「序章の前・b」。これに関しては、まぁ一安心というべきなんでしょうね。でも、「英雄さん」がどうして「彼」を殺さなくてはいけなかったのか。その辺の詳しい事情がとても気になるところ。

 ともあれ、シリーズ通して楽しめた作品でした。続編の構想もある?みたいなので、そちらにも期待。

 5/12 『鬼神新選II 東京篇』[出海まこと/電撃文庫] →【bk1

 明治の世に、謎の秘術で甦った新撰組幹部――近藤勇、土方歳三、沖田総司、原田左之助と、彼らを追う永倉新八の闘いを描いた「鬼神新選」2巻目。

 まず率直な感想ですが……本が薄いです。さらに本文が短い。いや、一緒に買った他の電撃新刊のうち2冊はややぶ厚めだったり、1冊は薄くても上下巻だったしーとか思うから余計に目立つのかもしれませんが、それにしても本文短い。つーか、新撰組紀行なんてどーでもいいから(そういうのが読みたきゃちゃんとそういう本買うし)本文を増量して欲しかったよなぁ、と思ったり。

 ……文句はさておき。斎藤さん登場ー。「無敵の剣(by.永倉)」の評価どおりかはさておき、しっかり実力がある風に設定されているのが良かったです。……正直、そりゃないでしょーと思わなかったといえば嘘にはなりますが。まぁ、フィクションにあんまり突っ込むのも野暮だしね……。

 で、彼の最後の台詞は、つまり、馬鹿一なあの状態ってことなんでしょうかねぇ? とにかく、永倉が孤軍奮闘というか戦力差がありすぎる現状、折角の生き残り同士なんだし彼ぐらいは味方についてあげて欲しいものです。

 5/17 『霧の日にはラノンが視える 2』[縞田理理/新書館ウィングス文庫] →【bk1

 罪を犯して妖精郷「ラノン」を追放され、今はロンドンで生活を送っている異種族の面々を描いた物語、第2巻。雑誌掲載の中編2本と、書き下ろし短編1本を収録。

 感想。今回も地味に面白かったです(褒め言葉) お話自体は特にどうということもないと思うのですが、ほんわり柔らか和やかな雰囲気が好みといいましょうか。なんとなく良い感じと思えるのですよねぇ。あとは全編通して、ラムジーがもうほとんど犬と化してるなぁ、と思ったりして。ちゃんと狼だと思われたいなら、それらしい行動を取りなさいって(笑) それから、個人的には1巻で気になっていた同盟盟主・ランダル氏の出番が増えたのが嬉しいところ。こういう慇懃かつ策士っぽい人は大好きです。

 収録作それぞれについて簡単に。1話目の「妖精たちの午後」は《同盟》の経営する葬儀社で起こった事件の話。とりあえず、最後のほうのガブリエル犬の雛のイラストにノックダウンされました。あああ、何回見てもかわいすぎるー一匹欲しいよこの子らー(←犬が大好きな人) ……えーと、正気に戻って。ラムジーやジャックは勿論、ラムジーの同僚で半妖精のケリもあれこれ絡んで働いていたはずなのに、何故かレノックス一人が忙しそうに走り回っている印象が残る話でした。キャラクターの問題なんでしょうかね……。あと、彼らの他にも《同盟》に所属する妖精たちがちょくちょく顔を出しているためか、この話は1巻よりも《同盟》の存在を感じさせてくれる話でありました。
 2話目「ネッシーと《風の魔女》」は休みを利用してクリップフォード村からロンドンに遊びに(というかラムジーに会いに)きたアグネスとラノンを追放されてきたばかりの《風の魔女》シールシャの交友がメイン。しかし後半は、1話目でもちらりと影を見せた、反逆者にして狂える魔術師フィアカラが登場したりと、今後の伏線となるような展開も。フィアカラに関しては、もうちょっと渋みと貫禄が欲しいなぁ、と。個人的な好みなんでしょうけれど、なんつーか小悪党っぽくて物足りないんですよね……。
 で、書き下ろしの「キス&ゴー」は「ネッシーと《風の魔女》」エピローグ後の、ラムジーとアグネスの話。恋する乙女なアグネスが良い感じなのですが……いくらなんでもラムジー鈍すぎるでしょう、これ(笑)

 ともあれ、フィアカラが何を企んでいるのか、ラムジーとアグネスの仲は進展するのか(今回のラムジー見てる限り期待薄そうだけど・苦笑)、色々気になることもあり。3巻が普通に楽しみです。

 5/20 『カオス レギオン03 -夢幻彷徨篇-』[冲方丁/富士見ファンタジア文庫] →【bk1

 かつての友を追う騎士とその従者の道程を描く「カオス レギオン」シリーズ、5冊目(過去篇では通算4冊目) ……富士見でこれだけ分厚い本はかなり珍しい……つーか、他にはザンヤルマぐらいかもしかして。

 今回の話は、かつてジークが斬ったという従士それぞれと因縁がある3人が、ジークに対する刺客としてレオニスに招かれ、まずは記憶を操る能力を持つ女性フロレス・アンブローシャが罠を巡らし、ジークとノヴィアは離れ離れになってしまう、という状況に。霧と魔獣に覆われた都市を彷徨う彼らが見出した、砕けてもなお残る想いとは……というもの。
 最初に発売された「聖戦魔軍篇」で既にジークたちの旅は一つの終着点を迎えているため、過去エピソードの冊数を重ねても緊張感が保てるのかな、と疑問に思っていた私が甘かった。このシリーズ、巻を重ねるごとにウブカタ氏本来の持ち味が表面化し、読み応えが増してきてます。現在と過去、ジークと彼の従士となった少女たちの想いと選択の行方に、つい惹きこまれてしまいました。

 過去篇で一番良い感じに思えるのは、やはりノヴィアの葛藤や成長ですね。今回は過去のエピソード――ジークと彼に葬られた2番目の従士ティアの出会いから別離までが、現在のノヴィアとジークの些細な感情の行き違いから生じる齟齬とリンクして描かれているのですが、それがまた上手い具合に書かれているんですよねー。フロレスの術に翻弄されながら、それでも様々な想いを積み重ねたジークとノヴィアがそれぞれ香りの呪縛を打ち破る場面は見物だったと思います。それにしてもティアは……辛いとか哀しいとかしか言いようがないなぁ……。
 あと、全体的にシリアスというか苦しい状況のなかで、トールとアリスハートのほのぼのとした交友(トールのほうは単純に友情と言い切れない感情を抱いてそうだけど)は一服の清涼剤。ですが、刺客の一人レティーシャ・ベルゼブベスによってレオニスが隠されていた真実を知った今、トールもこれまでのような動きは出来ないでしょうし……。ともあれ、レオニスとトールの今後、それから刺客の中で一番得体の知れないレティーシャの動きも気になるところ。

 さて。7月発売予定の「天路哀憧篇」は雑誌連載分のエピソードになるのかな。とりあえず、次巻でジークを狙う刺客は吸血医師ことアキレス・ツェペットの模様。一体どんな戦いが繰り広げられるのか、今から楽しみです。
 独り言。今回の話読んで、やっぱり「聖戦魔軍篇」は展開早すぎ&ページ数少なすぎだと思った。今後、加筆修正加えて完全版とか出てくれないかなぁ。無理だよなぁ(溜息)

 5/24 『吉永さん家のガーゴイル 3』[田口仙年堂/ファミ通文庫] →【bk1

 ご町内ほのぼのコメディ3巻目。今回の話は、吉永さん家の双葉ちゃんが、兎轄舎のお姉さんの策略で植物と話ができるヘルメットをかぶったことから始まります。

 感想としては、今回は前2作とやや雰囲気が違う話だったかなぁ、と。前半はこれまでどおりほのぼのでメルヘンな感じでしたが、後半はややシリアス&しんみりな感じに。双葉の影に隠れがちな和己が何気に格好良かったのはいいと思いますが、夜具先生までなんか良い人っぽく思えたのは……何かに毒されたのでしょうか、私……(震)

 ただ、個人的にはなんかこう、普通に面白くはあるのだけれど、それ以上ではなくなってきたといいますか。上手く言えないけれど、そんな気持ちにもなっていたり。1巻のご近所さんとのちょっとしたお話、日常に紛れ込んだほんの少しの非日常というところが気に入ったからでしょうか。少なくとも、非日常全開の錬金術バトルにはあんまり興味が持てないんですよね……単なる好みの問題ですけど。

 5/28 『PARTNER 1』[柏枝真郷/中央公論新社・C☆NOVELS FANTASIA] →【bk1

憧れのNY市警本部殺人課に異動した新米刑事のセシル。初出勤日、相棒として女性刑事ドロシーを紹介されるが、第一印象はお互い最悪。だが、事件はそんな二人とは関係なく発生する。バッテリーパークで他殺体が発見され、前途多難なコンビは事件解決に向けてNYの街に飛び出すのだった。

 講談社ホワイトハートで作品を発表されている作家さんの新作。男女の刑事コンビの話ということで、購入してみました。

 感想。「NYの刑事モノ」ということで、銃撃戦などアクションの多い派手な話かと思っていたのですが(偏見)、意外と地味というか地に足のついた感じのする作品でした。それにしてもあの事件の真相は……やりきれないというかなんというか。そりゃあ、単なるジョークで片付けられない社会だろうけど……最終的には悪ふざけが過ぎてことごとく悪い目が出てしまった、としか言えないだろうけど、ねぇ……。

 キャラクターの話。ドロシーはややきつめ&短気ながら、基本的にはさっぱりとした女性のようで。強くて格好良い女性が大好きな私としては、つい贔屓目に見てしまいそうです。一方、ドロシーの相棒のセシル。新米ということもあってか、いまいち頼りなさげな印象。ドロシーの機嫌を損ねて肘鉄喰らったり飛び蹴り喰らったりもしてますし(笑) ですが、頼りなさそうでもやっぱり刑事。締めるところは締めてくれた、という感じでした。その他、ドロシーの恋人・オーガストやセシルの母親ソフィアと従兄弟のロイド、そして殺人課の面々もそれぞれ個性的に描かれていて、興味を惹かれます。個人的には、ドロシーの元相棒で嫌味なラリーの現相棒(未登場)がどんな人なのか気になるところ。

 ともあれ、「男女の友情の物語」というこのシリーズで、今後ドロシーとセシルのコンビがどんな関係を築いていくのか楽しみです。

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