■ 2002.2月読書記録

 2/1 『流血女神伝 砂の覇王6』[須賀しのぶ/集英社コバルト文庫]

 「流血女神伝」エティカヤ編の第6巻。前巻あとがきの予告通り、「潮と汗と火薬の匂いで騒々しい」話になっています。

 「海神に愛された男」、大海賊トルハーンが本格的に舞台に登場。彼の性格も手伝ってか、作中の雰囲気はこのシリーズにしては珍しく、からっとよく晴れた日のような、気持ちのいい解放的な感じだったように思えました(戦闘が始まると一変しましたけどね)

  カリエ。だいぶバルアンに対する意識が変わってきてますね、これは。その感情があくまで同盟者に対するものなのか、それとも別のものなのか……さて、エティカヤ編が終わるころにはどうなってるかな? エティカヤの面々。イウナちゃん、良い子。彼女が以前やったことは許されるものではないけれど、でも良い子だし強い子だ。良くも悪くも、子供なんだよなぁ……としみじみ思いました。兄貴のところに送られるなんて、いろんな意味で心配だわ(涙) それから、ジィキとスゥランの母娘はこれから新しく関係を築いていけるのでしょうか。うぅむ、子供たちには幸せになって欲しいものですけど。一方、ルトヴィアの面々は、本人たちは全く自覚してなさそうだけど笑えます……(笑)

 あと、今回はラクリゼが可愛い場面が多かったような気が。カリエの前だから猫かぶってる可能性もあるけど、でもこれまでの、それこそ流血女神の化身かと思う程の超然としたイメージから、だいぶ生身の人間の位置まで近づいてきた感じ。また、かつて彼女が流血女神に奉げたあるものの存在が発覚。もちろん、言葉そのままの存在ではないかもしれないけれど……吃驚しましたよ。う~ん、やっぱり色々謎な人だ。

 今回、何より気になった事。ラクリゼがトルハーンとの会話で言っていた「最近女神が契約を結んだ、ザカールとは全く無関係の少年」。それって彼ですか!とその場にいたら詰め寄りたい気分。だって、条件的に当てはまりそうな人って彼ぐらいしか思いつかないしさー。でも、だとすると……復活後、彼もラクリゼ&トルハーンみたいな、超人の仲間入り? イ、イメージが合わない。

 以下、馬鹿話。……バルアンもいいけど、トルハーンもカッコイイですねぇ(目がハート) 副船長のソードも好きなタイプかも。いい男が一杯で、本当に素敵なシリーズですねー。

 2/1 『レディ・ガンナーの大追跡(下)』[茅田砂胡/角川スニーカー文庫]

 バカップルの、犬も食わない夫婦喧嘩には笑いました(笑) ……と、そういう感想は置いといて。いやぁ、お嬢様最高(笑) 度胸&行動力があると思ってましたが――いやはや、想像以上でした。期待通りに派手な爆発をしてくれましたしね。再登場の用心棒4人組、こちらも相変わらず。他の異種人類の面々もいい感じ。なんとなく、コーネリアス氏を気に入ってしまったかな(上巻口絵の、某執事に似た人……こう書くと複雑だ)

 一方、結構重いシリアスな部分もあります。突き詰めると非常にデリケートかつ難しい問題ではありますが、この話では作中の舞台&人物設定で上手く処理されているという感じです。まぁ、水戸黄門的勧善懲悪とでもいいましょうか。その爽快感が素直に味わえる作品もいいものです。(まぁ、そう言い切るには男爵に対する最終的な制裁が多少引っかかるけど)

 で、次が出るとしたら題名は「恋愛模様」ですか。…………やっぱり、一風変わった恋愛になるんだろうな(ほとんど確信)

 2/8 『陰陽ノ京 巻の二』[渡瀬草一郎/電撃文庫]

一人の悪名高い貴族が倒れた。知らせを聞いて駆けつけた安倍晴明の息子・吉平は、その貴族の魂魄を構成する要素の片割れ、「魄」が欠けていることに気づく。「魄」の筋を手繰るうちに明らかになる、晴明と陰陽寮にも関わる11年前の因縁とは――

 ……なんだか、こうしてあらすじ書くと吉平メインみたい。主人公は保胤なのに、おかしいなぁ(汗) あ~、まぁとにかく。渡瀬さんのデビュー作『陰陽ノ京』、1年ぶり&待望の第2巻。イラストが変わると聞いてちょっと不安でしたが(いや、さすがにこの話まで『パラサイトムーン』みたいな絵柄になったら嫌だなぁ、と)、なかなかいい感じです。

 話の感想は……なんと言うか、雰囲気たっぷりです。あくまで私の場合ですが、月光のみに照らし出された平安京の闇の中に、そこに潜む静かな緊張の中に我が身を置いているような、そんな錯覚まで覚えてしまいました。そんな感じで、多分この雰囲気と波長の合った読者は、面白いとかいう以前に、問答無用で世界に引き込まれるのではないでしょうか。上手く説明できませんけれど、なんとなくそんな気がする。

 追記。吉平と貴年が、なんとも微笑ましかったです。しかし吉平……天性のタラシかね、あれは(笑)

 2/9 『大唐風雲記 洛陽の少女』[田村登正/電撃文庫]

 一応、主役の座には男の子が坐ってますが、実質上の主役はなんとも評価の難しい女傑、則天武后(このお人は嫌いじゃないですね、私は。情は薄かったかもしれないけれど、為政者としてはそれなりに有能だったと思うし……はっ。いかん、話が感想から遠ざかる) こほん。えっと、作中では彼女は「則天皇帝」とされていますが、「則天武后」と表記させていただきます。こっちのほうが通りがいいでしょうから。

 話は、乱暴に要約すると「戦乱で命を落とした少女の肉体を借りて復活した則天武后が、安禄山率いる叛乱軍から民衆を守る為に、下僕達と時間移動という荒業まで駆使して頑張る話」、ですか。まぁ、なかなか面白かったです。ただ、ちょっと後半が駆け足だったような。それと、オチがしっかりついてないような感じが。その2点がマイナスポイントかなぁ。受賞作なんだから、一作でぴしっと完結させて欲しかったですね。その上で人気が出てシリーズ化、というなら大歓迎なんですけど。ちなみに、登場人物では楊貴妃がいい味出してましたか(笑)

 ……しかし、下手に知識があると細かい部分が気になって仕方ありませんな。いや、いちいちツッコミはしませんが。私が記憶違いしてる可能性もあるし。まぁ、娯楽小説で細かい事は気にしちゃいけませんよね。うん。(自己完結)

 追記。あとがき……返り点あるならまだマシだよなぁ、と呟いてしまいました(←講義、普通に白文だった人。) あぁ、上手く訳せなくて友人に泣きつきまくった嫌な思い出が……

 2/12 『リビスの翼』[円山夢久/電撃文庫]

孤児の少年・トール。ある日、彼が名家の御曹司だということが判明し、見知らぬ祖母が待つザイン島へ向かうことになる。そして、彼の帰還を発端に大陸全土を揺るがす事件が幕を開ける。果たして、少年の冒険の先にあるものは――

 第6回電撃ゲーム大賞において『リングテイル』で大賞受賞、デビューなさった作家さんの新作。今回は、『電撃hp』で連載されていたものに修正を加えての発売、だそうです。どんな話かな~と購入。

 うーん、正統派の作品という感じです。個人的には、なんとなく宮崎アニメを連想しましたね。わくわくしながら、最後まで一気に読めました。それなりに疑問を感じる部分もありますが、私としては「ま、いいか」で片付けてしまえる範囲。そのうち、関連作品が書かれることがあれば明らかになることも多いでしょうし。

 登場人物ではレイディ・ゴーダがよかったかな。なかなか哀しい女性ですよね……。

 2/20 『AVION ~天界高度戦記~』[富永浩史/富士見ファンタジア文庫]

隣国との戦火止まぬターク帝国。平和を願い、皇帝に直訴しようとしていたスラージェン男爵を、戦争拡大を目論む組織ノア・サンティリが襲撃する。その場に居合わせながら、辛くも逃れた男爵令嬢リョーチャ。彼女に与えられたのは、一機のオンボロ飛行機と執事を務める双子の兄弟、そして組織に騙され父を撃った少年アディン。この僅かな手勢とともに、リョーチャは父を助ける為に反撃を開始する。

 魔法に機械が取って代わりつつある異世界の、おそらくは帝政ロシアがモデルと思われる国が舞台。

 長い物語の序幕だろうにも関わらず、燃えました。頑張るお嬢はもちろん、登場人物の大部分がどこかカッコイイところを持ってて。敵役でも、レステス公爵夫人がまさに腹黒の女狐という感じで、今後の暗躍に期待できそうですし(笑) 彼らの願いあるいは野望が、諸外国を巻き込んでどんな物語を紡いでいくのか、また、神々と精霊の世界と伝えられる天界高度の謎など、とにかく続きが楽しみなシリーズになりそうです。

 独り言。読んでて、なんだか『天翔けるバカ』@須賀しのぶを読み返したくなってしまった(笑) いや、架空世界と現実世界の違いはあれど同じ複葉機モノということで。『天バカ』の複葉機乗りも、皆バカだけどかっこいいんですよね。傭兵部隊も勿論いいんだけど、ドイツ軍の連中がもうとにかく大好きなんですよ私。(←話がずれてる)

 2/25 『将神の火焔陣・地久篇 長安異神伝』[井上祐美子/中公文庫]

 前編である「天長篇」が、二郎神君の出奔というなかなかとんでもない終わり方をしていたのですが、なんとかかんとか落ち着くところに落ち着いた、という結末を迎えました「地久篇」です。

 天帝の早めた唐王朝滅亡というのも「あぁなるほど、言われてみればこれがあったなぁ」という事実に絡められていたりして、これまたお見事というか。そういえば、唐代に今回の話の元になった大火って実際にあったのかな。この辺、調べてみるのも面白いかも。

 それから、登場人物たちも結構いい感じでした。派手な大立ち回りとかが無くても、ちょっとした行動で存在感がしっかりと見えるというか。個人的には、お気に入りの三娘や東方朔にちゃんと見せ場があったのが嬉しいですね。

 二郎と翠心の絆もまた深まって(というか、翠心が意外なほどに情が強いだよなぁ)、やれやれこれで一件落着……かと思いきや、彼らの苦労(?)はまだ続くんですよね……ふぅ。

 2/26 『ここほれONE-ONE! 2』[小川一水/集英社スーパーダッシュ文庫]

 世にも珍しい(というか、史上初?)の土木SFの続編。全3巻ぐらいかな、と踏んでいたのですが、今回で完結です。

 今回は、途中辺りからは中島みゆきをBGMにかけたい感じでした(どの曲かって? 勿論、火曜の某番組のOPです) 終わり方も、なかなか綺麗にまとまった感じで良かったです。主役の2人も上手くいきそうだし、拓丸君も思いの外頑張ってくれましたし。静堀さんは……まぁ、人の価値観はそれぞれですからね。私は、生憎そこまで人生をかけたものや執着するものがありませんから、なんとも言いづらいです。

 そうそう、鉄床石に秘められた謎はさすがに予想外。全く、スケールが大きいというかなんというか。しかし勝手に他人の――というより、他の生命体の生まれる可能性のある星を、加工しないで欲しいものですね(笑)

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