■ 2001.4月読書記録

 4/2 『天夢航海』[谷山由紀/ソノラマ文庫]

 いい話だから見つけたら即行で捕獲して読め、と友人に薦められ、延々と探しまくっていた本。ようやくGETできました。……しかしまさか[ジェイブック]で購入できるとはね……(他の本を注文する時、ついでに期待0で申し込んでいた) [bk1]ではリストに載ってないし[Amazon]では在庫切れ、Bookoff等を歩き回っても見つからず(この間に、デビュー作を手に入れられたのは幸運だったでしょうね。今思うと) 半分入手を諦めていただけに、届いた時は嬉しいと思うより先に、これは夢じゃなかろうかと疑いました(^_^;

本屋の片隅においてある『天夢界紀行』という小冊子。なんらかの事情で地球に降り立ち、故郷――<天夢界>からの迎えを待つ異邦人たちの物語が綴られているこの冊子には、実際に<天夢界>行のチケットが入っているという噂があった。それぞれの事情から天夢界に思いを馳せ、そして実際にチケットを手に入れた少女たちの選択は……。

 ……と、こんな内容の連作短編集。

 友人が薦めた気持ちが、分かるような気がします。「ここは自分の本来居るべき場所ではない」という思い。そこまでいかなくても、多少なりとも周囲に「壁」を感じたことって、一度ぐらいはあるのではないでしょうか? 現実に向かい合い、生きていかなくてはいけないと分かっているけれども……そういう経験って、ありませんか? 恥ずかしながら私にはあったのですけど……その時の微妙な感情を思い出すような、そんな作品。じん、と心に染みてくるものがありました。

 これ、確かにお薦めの本なのですが、残念な事に現時点では入手が難しいと思われます。ということで、ちょっと別作品を宣伝。同じくソノラマ文庫から発売中の『こんなに緑の森の中』。これはまだ一般書店でも入手できると思いますので、まずこちらを手にとってみてください。そして、この作者さんとフィーリングが合いそうだと思われたら、この『天夢航海』も探してみてください。それだけの価値は、あると思います。

 4/7 『スカーレット・ウィザード5』[茅田砂胡/中央公論新社・C☆NOVELS FANTASIA]

「では、これから撮影内容を説明する」
作戦内容の間違いだろうと、誰もが思った。

 多分これが、今回一番笑った場面。他の場面も割とこんな感じなので、ずっと笑っていた、という説もありますけど(笑)

 そんなこんなで相も変らぬ非常識&裏技を駆使して爆走する最強夫婦の物語、完結。表紙は最終巻らしく怪獣夫婦&息子のダニエル君(着グルミ装備) お母さんの足にしがみつくダニエル君が、何とも言えずかわいいです。

 いろんな意味で予想を裏切った話に仕上がっていました。何が一番予想を裏切ったかというと……「主役2人が(それなりに)ラヴロマンスしてる!!」ということでしょうか(笑) さすがにハーレクインには及ぶべくもないですが(^_^;

 気になったのは、ちょっと後半の展開が唐突すぎないかってこと。4巻までに、伏線らしい伏線がなかったように思うので(私が気がつかなかっただけかもしれないけど)、「なんかいきなりだな……」と思う部分が少々。もっともこのシリーズ、ほとんどノリで読んでますから、取って付けた設定でも別に構わないのですけどね。

 以下、完全にネタばれ。[まさか、ジャスミンが死ぬとは――正確には冷凍睡眠なのですが。でも、解凍すれば数時間で死亡ということだから、大差はないと思う――てっきり「夫婦で宇宙生活者になる」というエンディングになると思っていたので、我が目を疑いました。将来、ケリーがジャスミンを目覚めさせる事ができるか否かは、読者の想像にお任せします、なのかな。それとももしや、プレミアムブックで補完されてるとか……ありそうで嫌だ。いくら応募券のためとはいえ本切るのって、この上なく嫌なんだけど。せめて、新潮社とかみたいにカバーに付けてくれればいいのに。]

 最後に、全然作品に関係ない話なのですが。なんとなく作者さんのSF観に親しみを感じました。私も、SFってその程度の認識しかないもので……(あぁ、SFファンの方ごめんなさい)

 4/9 『EDGE3 ~毒の夏~』[とみなが貴和/講談社X文庫ホワイトハート]

 まず最初に、シリーズの紹介。いろんな意味で手を出し難い最近のホワイトハートの中で、『EDGE』は安心して読める作品の一つ(微苦笑) さらに言うと、「何故これがホワイトハート?」と首を傾げたくなるほど、読ませてくれるシリーズ。

 内容を簡単に言うと、天才心理捜査官(プロファイラー)・大滝錬摩の事件簿、というところでしょうか。

 さて。このシリーズの何が良いかって、犯人の心理描写。1作目の爆弾魔、2作目の誘拐犯、そして今回の毒ガス事件の犯人。ほんの少しだけ「普通」から足を踏み外してしまった彼らの心理に、気がつくと自分まで引きずられてしまうような感覚を覚えてしまうほど。追う側にいる錬摩も、ギリギリ「普通」の境界上に留まっているような危うさを抱えていて、時々暴走してしまうためにさらにドキドキしてしまいます。個人的には、その辺の下手なミステリ(あえて名前は言わない)より、よほど読み応えのある作品ではないかと思っています。

 一方、この手のレーベルお約束の恋愛要素は、というと……ちょっと説明長くなります。
 主人公の錬摩は、自身の過去の経験によって「自分が女である事が許せなくなっている」女性。そのため、男性に対して恋愛感情を抱くことはないのですが、彼女の相棒・藤崎宗一郎はそんな彼女に想いを寄せていました。藤崎は彼女の為に幾度も危険な目に遭い、障害を負うたびにそれを補う超能力を身につけていきます(もともと備わっていた超能力が、次第に研ぎ澄まされていったというべきか) そんな二人の微妙な関係は、あっけなく終わりを迎えます。藤崎が頭に被弾し、あわや植物人間にという状態になってしまうのです。幸いなことに、彼の超能力はここでも発揮され、奇跡的に意識を回復。しかし、その記憶は全てリセットされ、精神年齢が0歳にまで引き戻されてしまったのです。責任を感じた錬摩は、彼を引き取って養育することに。驚異的なスピードで成長する藤崎――「宗一郎」の精神(1巻当時5歳。3巻では10歳ちょっと?) しかし、宗一郎はあくまで「宗一郎」という人間であって、決して「藤崎」ではない。そう分かっていながら、ふとした拍子に「藤崎」を思い出してしまう錬摩。藤崎を恋愛対象としては見ていなかったけれど、大切な友人であったことは事実なのだから――と、古典的といえば古典的だけど、とても切ない設定が最高に良いんですよー。

 今回の話で、これまでは純粋に錬摩を唯一の身内として慕っていた宗一郎の感情が少し変化していて。そんな中、自分には隠されていた「藤崎」という存在を知って葛藤し――ラストは、錬摩も本当に辛そうなので、読んでて苦しい。次の話でも、宗一郎の精神年齢は成長していることと思いますが、その時に二人の関係がどうなるのか、気になって仕方がないです。

 そして、どうやら錬摩に関係した事件も起こりつつあるようなのですが――ちらりと登場したあの人は……ですよねぇ。やっぱり。

 4/13 『黄昏の岸 暁の天<そら> -十二国記-』[小野不由美/講談社文庫]

 5年ぶりに復活の「十二国記」シリーズ。今回の話は、戴国――王・麒麟が共に失踪している彼の国に絡んだ話。『魔性の子』(新潮文庫)とほぼ同時期を十二国中心に見た話、になるかな。そのため、あの作品で腑に落ちなかった事が色々と納得できました(『魔性の子』で汕子と傲濫があそこまで暴走した経緯とか、泰麒を迎えに出向いたのが延王だった理由、とか) ……しかし、広瀬先生に関しては一言の言及もナシか……十二国の面々(と言っても、汕子と傲濫、廉麟だけだけど)からみた彼の印象、ちょっと見てみたかったんだけど。

 あと、陽子を筆頭に慶国の面々が活躍(?)してるのがよかった。特に陽子。延王に言い負かされず逆に自分の意見を押し通すなんて、初登場時を考えると本当に成長したな、と思います。……ところで。浩瀚の印象が変わってしまったのって、私だけでしょうか? 好きなタイプってことに変わりはないんですが……なんかこう、想像していた人柄よりも微妙にお茶目なので、思わず頭を抱えてしまったのですが(←そりゃ、自分の思い込みのせいでしょうが)

 しかし泰麒は、哀れ。驍宗も結局…(自主規制)…だし。正直言うと私、戴国主従にはあまり魅力を感じていないのですが、それはそれとして気の毒だなぁ。「冬栄」(『IN・POCKET』2001年4月号掲載の短編)では主従とも、幸せそうだっただけに、余計そう感じます。それに李斎さん……。彼女が慶にやってきた場面は絶句してしまいました(T_T) 今後も、彼らの行く先には無数の困難があると容易く想像できてしまいますが、なんとか生き延びて欲しいと、そう切に思います。

 それはさておき。今回の話ははっきり言って完結してないですよね? そりゃまぁ、泰麒は十二国に帰還したけれど、それ以外はなんにも問題解決してない……この1冊が丸々プロローグって感じがする。目次を見ても、<序章>はあるけど<終章>はないし。これはやっぱり、「少なくとも次の本編まで話を持ち越す」ってことですよね(溜息) まぁ、ここまで待ったんだから数ヶ月程度なら待つのも苦にならないけど、でもやはり今回の話だけだとほとんど蛇の生殺し状態だから、可能な限り早く続き書いて欲しい……とはいえ、それで作品の質が落ちたりしたら嫌だし……うぅ、複雑な心境です。とりあえず、7月の新刊は短編集らしいし、その次か。今年中に出るかな?……最悪でも年単位では待たせないで下さいね。これは本当に頼みますよ、小野さん(哀願)

 独り言。個人的にお気に入りの供王こと珠晶が登場しなかったのが、ちょっと残念。楽俊も慶が主な舞台なのに、出番なかったしさ(←私の中では、彼と陽子はセットになってます) でも、氾王がなかなか楽しい人で面白かったので、その辺の不満は±0になってたりする。私的には氾王のイメージ、『アンジェリーク』のオリヴィエに近いもので固まっちゃいましたわ(笑)

 4/20 『エンジェル・ハウリング2 戦慄の門――from the aspect of FURIU』[秋田禎信/富士見ファンタジア文庫]

 「エンジェル・ハウリング」シリーズ第2巻は、DMで連載中の『フリウ編』。主役のフリウ・ハリスコーは念糸能力者であり、水晶眼という特異体質を持って生まれた少女で、その異能の為につらい運命に翻弄される事になります。

 1巻読んだ時点ではいまいちかな~、という印象だったのですが、今回で評価上向き。前回に示された謎の数々は、解決するどころかさらに量が増えてしまいましたが……まぁ、まだシリーズ始まったばかりですから。今後、少しずつ解明されていくんでしょう。多分。

 基本的にシリアス調のシリーズなのですが、登場キャラどうしの掛け合いはなかなか面白いです(もしも、意味不明なツッコミをする人精霊・スィリーと、沈黙に耐えられないかのようにひたすら喋るアイネストの会話が成ったとしたら、居合わせた第三者は逃げ出すしかないかも(笑) そういう、どこかほのぼのした雰囲気とは裏腹に、語られる物語は加速度的に悲劇へ、取り返しのつかない破壊へと向かっていき……最後の方のフリウの言葉には、なんともやりきれない気持ちになりました。彼女の養父の残した手紙も、なかなか胸にくるものが。

 さて、次巻はミズーサイドの話。フリウ編でこういう終わり方をしたとなると、どういった展開になるかな。そして何より、今回影も形もなかったアイネストがどんな登場をするのか、ちょっと楽しみです。

 4/23 『ぶたぶた』[矢崎存美/徳間デュアル文庫]

 本屋さんで表紙を見て、ぶたぶたのあまりのかわいさについ購入。私、ぬいぐるみとかのかわいいものにも弱いのです(^_^;

 「山崎ぶたぶた」という名前の生きているぬいぐるみ(♂) 場合によって、サラリーマンだったりタクシーの運転手だったり(どうやって運転してるんだ?)、フランス料理のコック(よく燃えないなぁ)だったりする彼。そんなぶたぶたと、様々なシチュエーションで出会った人たちの話を描いた、連作短編集です。

 ひたすら「かわいいー!」と心の中で叫んでました。たとえ中身が普通の人だろうと、ちょっと小首を傾げてる様子とか、風に飛ばされてる様子とか(笑)、そういうのを想像するともうかわいい!としか言いようがないんですよねー。 あぁ、真剣にぶたぶたが欲しい。布買ってきて、作ろうかな(悩)

 ……まぁ、ぶたぶたのかわいさはひとまず横に置いといて。話自体も、のほほんとしてて面白いです。各話の登場人物が初めてぶたぶたを見た時のリアクションは笑えるし。

 さて。布の調達は後回しにして、とりあえず型紙作っとこうかな……。

 4/26 『穢土 -エド-』[樹川さとみ/EXノベルス]

漆黒の髑髏――天野が手放したそれは、かつての恋人・美弥子の遺品だった。その後、髑髏を使用していた占い師が変死、事件を追って天野の前に現れたルポライター細田は、驚くべき事実を天野に告げる。

 ジャンル的には、ホラー……に、一応なるのかな? 個人的にはあまり怖くなかったけど、それは私がやたらそういうのに免疫があるからかもしれないので、なんとも言えません(←お化け屋敷は言うに及ばず、ホラー映画も顔色あまり変えずに見るタイプ)

 話は、わりと面白かったです。ただ、後半になればなるほど「不気味」な雰囲気を感じなくなりました。前半部分はまだ得体の知れない不気味さは多少なりともあったと思うのですが、後半はそういうのが無くなって普通の伝奇アクション(?)になっていった、という感じ。重ねて言いますが、面白かったのことは面白かったのですよ。本当に。

4/28 『トリニティ・ブラッド Rage Against the Moon フロム・ジ・エンパイア』[吉田直/角川スニ―カー文庫]

 文明崩壊後の世界での人類VS吸血鬼もの。なんだかいろんな作品の名前が頭に浮かんできますが、そういうのをあまり気にしなければそれなりに楽しめるのではないかと。…………多分。自信ないけど。

 で、感想。……えぇと……敵役がドイツ系ってのもまたパターンだな、と思ったりするのは、私だけなのでしょうか? ……うぅ、感想らしい感想がこのぐらいしか思いつかない(汗) あとはひたすら「主人公、ますます某人間災害に似てきたような(性格が)」とかそういうことしか思わなかったので、ある意味降参です(^_^;

 キャラもねぇ。主人公を筆頭によく見るパターンで、あまり惚れこめる人がいないし(……とか言いつつ、トレス・イクスはそれなりに好きですが。でもこれも惚れこむって程じゃないのです) 今回登場した敵の幹部も、悪くはないんだけど……でも正直いまいち。少なくとも、まだまだシガリロが似合う男ではないと思いましたね。私は。(←私情に走りまくった発言するなよ)

 廃棄処分はちょっと惜しい気もするけど、かといって作品自体は今後も買いつづける程面白いとは思えないし……立ち読みに転向しようかな、と現在考え中。

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