■ 2002.4月読書記録

 4/1 『レリック・オブ・ドラゴン 誓約の紋様』[真瀬もと/角川ビーンズ文庫]

20世紀初頭の英国に、女吸血鬼レディ・オブ・ダークネスとドラゴンの騎士の伝説が息づく土地があった。その伝説の登場人物の末裔とされるフェイン家で育ったロルフは、ある日出会った義眼の男に謎めいた言葉をかけられる。「契約により、きみをもらいにきた」と。一方、ロルフの主人であるエドガー・フェインは、近頃ロンドンを騒がせている連続猟奇殺人鬼・ダークレディを追っていた。

 メインの登場人物が揃って男性なので、「……地雷踏んだかな」とちょっと覚悟したのですが、杞憂に終わりました。良かったー。

 設定などは、割としっかり作りこんである感じ。ただ、シリーズ化を視野に入れているのか、多少詰め込みすぎかという面も有り。少なくとも今回はここは削れるんじゃないかな、と思う部分が少々ありました。まぁ、それを差し引いても個人的には好印象な作品でしたが。続編が発売されるなら、このままの雰囲気を保って欲しいものです。間違っても、ヤバイ方向には走らないでね(祈)

 独り言。主役の主従コンビも良かったけれど、私はアンセルムが一番好き。今度は彼が主役の話を読みたいな……無理だろうけど。

 4/3 『A戦場のプリンセス』[野田麻生/角川ビーンズ文庫]

父母を亡くして以来、謎の『あしながおじさん』の援助を受け、3人の異母弟と暮らす伯爵令嬢ハル。放蕩者の父親が残した借金のせいで火の車となっている生活を改善するため、彼女は働くことを決心する。そんな彼女に与えられた仕事は、なんと王子様の身のまわりの世話をすることだった。なかなかいい性格の王子に振り回されるハルだが、それに加えて王位を狙ってと思われる事件が続発し――。

 一昔前の少女小説でよくありそうな、どたばたラブコメディ。タイトルから、もっと違う話を想像していたのですが。

 そこそこ面白かったです。ただ、コメディにしてはテンションが今ひとつだったかな。もっと突っ走ってくれて良かったと思うのですが……まぁこれは好みの問題ですから。それと、舞台となってる「遊園地の国」。設定は面白そうなんだけど、いまいち生かしきれてないような印象が。個人的には、その点が少し残念といえば残念でした。

 あしながおじさんの正体は、割と序盤で「もしかして?」と見当がついたのですが、それでもちょっとうるっときてしまいました。我ながら涙腺が弱いですね(笑)

 4/15 『暗いところで待ち合わせ』[乙一/幻冬舎文庫]

事故で視力を失い、独りでひっそりと暮らすミチル。人間関係が上手く築けず、職場でも孤立しがちなアキヒロ。ある冬の日、駅のホームで起こった殺人事件がこの二人を引き合わせる。そして、奇妙な同棲生活が始まった――。

 題名を見た瞬間、何の疑いも無く「あぁ、今回はホラー系の話か」と思い、さらに表紙を見て「やっぱりホラー系だな」と確信を深めて読み始めたのですが……実際は切ない系の話。油断してたせいか、途中でもう涙腺が緩んでました(^_^;

 物語の始まりが始まりなので、ミステリ的な要素も含まれています(まぁ、結構すぐに真相は見当つきますが) ですが、やはりそちらよりも主役二人の変化が見どころではないでしょうか。
 ずっと自分なりの「幸せな生き方」を続けてきた二人が、最初は互いの存在をないものとして扱おうとし、しかしやがて極控えめな交流を始めることになる。その過程が、なんともいえない微妙な空気を含んでいて良い感じでした。少しずつ前向きに、外に目を向けるようになった彼らは、物語終幕後もまたゆっくりと変わっていくんだろう、と。その姿が見えるようで、読後はなんとなくほんわかした気分になりました。

 追記。ミステリパートの方ですが、私は犯人に同情しますね。そもそも、被害者のようなタイプの人間はどうも好きじゃないし。

 4/20 『微睡みのセフィロト』[冲方丁/徳間デュアル文庫]

近未来の地球。超次元的な能力の持ち主である感応者<フォース>と通常の五感しか持たない感覚者<サード>の間に起こった大戦の終結から十数年が経ち、両者は共存の道を模索している状況にあった。そんな中で起きた一つの事件。かつて家族を感応者に殺された保安機構捜査官のパットは、卓越した感応者である少女ラファエルとともに事件を追うことになる。

 第一回角川スニーカー大賞にてデビューされた作家さん。作品は(好みは分かれそうながら)面白いのに、肝心の作品がアンソロジー収録だったりハードカバーだったりと、他人にはなかなか薦めづらいものがあるため、今回は新作が読めるということ以上に個人名義の文庫だということが嬉しかったり。なにより、私のお財布にも優しいし(^_^;

 それはさておき。今回は、なんだかかなりとっつきやすい作品だった、という印象(……いや、『ばいばい、アース』に比べたらですが……) あと、個人的に徳間デュアル文庫のノヴェラ(中編)には物足りなさを感じてしまう事が多いのですが、この作品ではそれを感じることも無く、最後まで一気に読んでしまいました。特異能力の詳細については、純粋に私の理解能力が足りない為いまいちぴんと来ない部分もありましたが、それを差し引いても十分満足できる作品だったと、そう思います。

 で。今回の物語はきちんと完結していますが、謎のまま残されている部分もあったりする等、シリーズ化の含みも残してある感じ。私は多分、続編発売されたら講読するでしょうね。(この人の作品世界が基本的に好きだというのもありますが)

 独り言。ところで、いい加減に『黒い季節』ぐらい文庫に落としてくれないものだろうか、角川書店。電子文庫化の予定はあるそうだけど、やっぱり私は、普通の紙の感触の方が好きなんだよ……。

 4/22 『クロスカディア2 影メグル地ノ邂逅者タチ』[神坂一/富士見ファンタジア文庫]

 正体不明&記憶喪失の少女を巡っての各種族の対立を描いた(一部誇張)「クロスカディア」2巻目。1巻と併せて、これにてオープニング終了というところですか。

 えぇと、前巻は「普通に面白い」という評価だったのですが、やや上方修正。なんというか、細かい部分も結構丁寧に作ってるかも?という感じが個人的に好印象で。犬とか(笑) ま、物語も本格的に転がり始めた模様ですし、今後しっかり盛り上がってくれれば良いのですけど。

 しかし、今のところかなり本気で役に立ってませんな。レゼルド君。次はとりあえず彼の故郷に行くみたいだから、そこで封印解いて強力な戦力になって面目躍如といくんだろうか……それはそれで、今までのイメージが崩れちゃうなぁ(笑)

 4/25 『流血女神伝 砂の覇王7』[須賀しのぶ/集英社コバルト文庫]

「海賊王」トルハーンと天才指揮官ギアス。両者の激戦の最中、名目上の夫・バルアンとともにトルハーンの下に身を寄せていたカリエは、狙撃手として敵艦の提督を撃つ。彼女の放った弾丸は見事に命中するが、自身も銃弾を受けて海に投げ出されてしまった。衝撃で意識を失ったカリエを救出したのは、敵――ルトヴィア海軍の旗艦だった。

 「流血女神伝」エティカヤ編の第7巻。前回とんでもない終わり方だったものだからか、たった3ヶ月ほどの時間がひたすら待ち遠しかったです。

 今回の主な舞台は、ルトヴィアのロゴナ宮……ここが舞台となると、一気にドロドロの政治劇が展開されますな。しかも、前回がなまじ解放的な雰囲気だったせいか、どうも閉塞感がつきまとってるような気がして仕方なかったです。カリエは、いつものように前向きに行動してくれてたのですけどね。

 で。民衆の期待を受けて即位したドーン兄上は、遅々として進まない改革に頭を痛めているようで(比べちゃ失礼だろうけど、某首相の顔がちらちらと) なんか、危惧していたとおりの状況にはまっていきそうで怖いなぁ(涙) そして、ロイ。彼の政治上の思想なんかは最初から知っていましたけど……彼が牙を剥き出しにした時は、また凄まじいことが起こりそうだ。そして案の定というか、以前サラさんを呼んだのには裏がある気配だしな……って、悪いことばかり考えてしまうのは何故だ(汗)

 一方、気が重くなるような展開の中に挟まれるエピソード――トルハーンとギアス、立場が分かれてしまった親友同士が、それでも互いを信頼して行動する様子や、海賊団を託されたソードや、親衛隊等――には、和ませてもらいました。これらのエピソードも、ただ優しかったり甘かったりではないのですが。

 さて。今回は、これを叫ばなきゃ嘘でしょう、というわけで叫びます。ミュカ、会いたかったよーーー!!(嬉泣) うぅ、もちろん何時かは復活してくれると信じていたけれど、実際に目にするともう……!(←言葉にならないらしい) しかも、色々と良い感じに成長してるし。今後、彼の存在がルトヴィアに何をもたらすのか。そして、おそらく彼の回復に力を貸したであろう存在は、何を代償として求めるのか。とにかく、今後に注目ですね。

 毎度恒例、馬鹿話。ミュカの復活は心の底から嬉しかったけど、バルアンの出番が少なくて寂しかったです(T_T) まぁ、カリエは彼と離れたおかげで自分の気持ちに気がついたわけですが……これも、なんだか切ないですね。とにかく、次巻で無事に彼らが再会してくれますように。愛しのマヤルの出番を増やす為にも(←そこかい!) しかし、ギアスさん……一体、身長幾つなんだろう、とかどうでもいいことを考えてしまった(笑)

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