角川書店の『ザ・スニーカー』と富士見書房の『ドラゴンマガジン』の2誌でそれぞれ別の物語が連載されているという、変則的な冲方氏の新シリーズ。『ザ・スニーカー』連載分は、舞台となるミリオポリスという都市の治安維持を担当する遊撃小隊の物語。
文体は「ヴェロシティ」程ではないとはいえ記号を多用した独特なものですが、まぁ既に慣れたので苦戦することなく読めました。
内容は相当乱暴にまとめると、身体的障害を補うため体の一部を機械化する政策が採られている近未来の都市で、特に治安維持目的で通称「特甲」と呼ばれる機械義肢を与えられた少女たちがテロや犯罪の横行するろくでもない世の中を生きていく話、というところでしょうか。この巻は全3話で構成されていて、遊撃小隊の三人娘――「黒犬」涼月、「紅犬」陽炎、「白犬」夕霧の3名それぞれの過去を絡ませつつ、今後の展開への準備も余念なく行われていた印象。3人の抱える過去はどれも悲惨ではあるんだけど、本人たちが時折それに苦しめられながらも過度に哀れまず日々を強かに生きている姿が良いですね。要所要所で描かれる3人の信頼関係もまた良し。
登場人物紹介も終わったところで、この先は都市の裏側で暗躍するプリンチップ社との戦いが本格的に始まるのでしょうか。「スプライト」との繋がりも含めて、続きが楽しみ。
作品名 : オイレンシュピーゲル 壱 Black & Red & White
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著者名 : 冲方丁
出版社 : 角川スニーカー文庫(角川書店)
ISBN : 978-4-04-472901-1
発行日 : 2007/1