『天冥の標3~6』[小川一水/ハヤカワ文庫JA]

 のちに冥王斑と命名される謎の疫病のパンデミックを発端に、21世紀の地球から29世紀の植民星メニー・メニー・シープに至るまでの、人類その他生命体の歩みを綴る壮大な物語。

 5巻までは、1巻に繋がる流れやキーワードが出てきつつも各巻アプローチの異なる作品であったことからそれぞれ独立して読めなくもないかなという雰囲気だったのが、6巻でいよいよ全ての流れが収束して1巻に至る大きな流れになった、という感じ。
 どの巻もそれぞれ見どころはありますが、やはり一大転機となる6巻がすさまじかった。
 三分冊となった6巻で描かれた一般社会と「救世群」の拗れに拗れた関係にカルミアンたちの超技術が加わったことではじまった悲劇がなんともはや。でも、救世群(というかミヒル)は暴走しすぎとはいえ、これまで彼ら彼女らが受けてきた迫害の歴史もあるわけで……副題ともなっている「宿怨」という言葉が重くのしかかって、ここに至るまでの数百年に打つ手はなかったのかとどうしても思ってしまう。終盤、淡々と描かれる人類社会崩壊の光景には言葉もありませんでした……。
 そんな中、アインとイサリの奇妙な縁と年を経ても変わらぬ絆は救いだったけれど……だからこそ、イサリの密やかで報われぬ想いが切なかったなあ……。

 役者はこれでおおよそ揃って、次の7巻で舞台が整うことになるのでしょうか。1巻に至るまでまだ百年単位で時間が必要なはずですが、それにしては同一人物としか思えないイサリやミヒルといった存在が気になる。カルミアンも救世群と離れなくちゃだし……。空白の時間になにが起きるのか、今から楽しみで楽しみで仕方ありません。

作品名 : 天冥の標VI 宿怨 PART3
    【 amazon , BOOKWALKER , 紀伊国屋
著者名 : 小川一水
出版社 : ハヤカワ文庫JA(早川書房)
ISBN  : 978-4-15-031094-3
発行日 : 2013/1/25

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