『明治断頭台 山田風太郎明治小説全集7』[山田風太郎/ちくま文庫]

 先日何かの雑誌のベストミステリ特集でも名前が挙がったらしい『明治断頭台』。私はどちらかといえば『妖異金瓶梅』のほうが好きですが、これをベストに上げる人が多いのも納得のミステリであり、明治物としてはいうまでもなく傑作級の作品……つーか、明治物は全部傑作なんですが(←言い切った) なお、ちくま文庫の明治全集はほぼ品切れ状態ですが、これと『警視庁草紙』は流石にまだ一般書店で入手可能。

 さて、本書の内容は、明治維新後、ごく短期間だけ存在した弾正台(役人の不正を取り締まる役所)の大巡察に任じられた2人の青年――香月経四郎と川路利良の2人が、様々な不可能殺人事件に挑む、というもの。プロローグにあたる最初の2章から5つの難事件を経て、物語が収束していく圧巻の最終章という、全8章構成になっています。
 それぞれの事件で用いられるトリックは、いかにも当時ならではというもので、それが実に鮮やかに決まっています。なかでも「怪談築地ホテル館」と「遠眼鏡足切絵図」がお気に入り。前者は「ああそれをそう使うのか」という仕掛けに納得し、後者は実際にあった事が巧みに利用されていることに感心しました。
 ミステリとしてだけではく、理想主義者の香月と清濁併せ呑む川路の友情の行方、彼らの手足となって働く不良邏卒5人と事件解決に重要な役割を果たすフランス美女@巫女装束のエスメラルダといった面々の活躍(?)とその運命の帰着といった物語要素は単純に面白く読めますし、そして(これは明治物全編に共通している要素ですが)後世に名を残す有名人たちの人生の交差も楽しめます。

 そして、この作品の評価を不動のものとしていると思われる最終章、「正義の政府はあり得るか」で用意されていた仕掛けは、解説でも書かれているとおり「読んで驚け」としか言いようがないですね。初読時、どこがどうとは言えなくても微妙に「……?」となっていた部分が、この章で全て白日の下に晒されたときは衝撃でした(この衝撃を味わうためにも、できるだけ予備知識は仕入れずに読むことをオススメします) そして、そこからの怒涛の畳み方がまた……悲壮なはずなのに、奇妙な爽快感も感じる終幕が素晴らしい。

作品名 : 明治断頭台 山田風太郎明治小説全集7
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著者名 : 山田風太郎
出版社 : ちくま文庫(筑摩書房)
ISBN  : 978-4-480-03347-5
発行日 : 1997/8

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